キハッソク

Scientific Name / Diploprion bifasciatum Cuvier, 1828

キハッソクの形態写真

20cm SL 前後になる。体高があり、側へんする。
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20cm SL 前後になる。体高があり、側へんする。20cm SL 前後になる。体高があり、側へんする。20cm SL 前後になる。体高があり、側へんする。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★★
      めったに出合えない
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ハタ科キハッソク亜科キハッソク属

    外国名

    学名

    Diploprion bifasciatum Cuvier, 1828

    漢字・学名由来

    漢字 木八束 Kihassoku
    由来・語源 和歌山県田辺などでの呼び名。同地ではルリハタも同じ呼び名。〈近海に産する。肉は不味い〉、〈この魚は煮え難く、(之を煮るのに)木八束を要すると云う意から〉『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)
    Cuvier
    バロン・ジョルジュ・レオポルド・クレティアン・フレデリック・ダゴベール・キュヴィエ(Baron Georges Léopold Chrétien Frédéric Dagobert Cuvier 1769-1832)。フランスの分類学者。キュビエとされることが多い。スエーデンのリンネ、フランスのビュフォンの分類体系に解剖学や古生物学などを加味して現在の形の礎を作った巨人のひとり。
    宇井縫蔵
    うい・ぬいぞう 1878年、和歌山県田辺生まれ。教諭、魚類学、植物学、民俗学。南方熊楠の協力者でもある。国学者・歌人・民俗学者の宇井 可道(うい よしみち)の長男。『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)は魚類学的にも民俗学的にも重要。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。沿岸の岩礁やサンゴ礁。水深2-50m。
    九州北岸・西岸、相模湾〜高知県柏島・愛媛県深浦の太平洋沿岸、鹿児島湾、琉球列島。
    希/佐渡島以南の本州日本海側
    済州島、台湾、福建省〜トンキン湾の中国沿岸、南沙諸島、インド-西太平洋(インド以西)。

    生態

    「石けん魚(Soapfish)」と呼ばれる体表に石けんのように泡立つぬめりを出す魚類がいる。このぬめりがグラミスチン(grammistin ヌノサラシ属のGrammistesから)、もしくは脂溶性の別の毒という魚類体表粘液毒だ。国内ではキハッソク、ルリハタ、アゴハタ、ヌノサラシの4種がこのタイプの毒を持つ。
    この毒は体内に注射器で入れても毒性を示さず、海水に溶かしたなかに魚類などを入れると毒性を示す。また魚類に対する毒性よりも細菌などに対する防御性が高いとも。
    いずれにしろ、水槽などに他の生物と一緒に入れてはいけない。

    基本情報

    暖かい、浅い海域に生息している小型のハタ。個体数が少ないためか非常に希に水揚げされる。
    キハッソクは和歌山県田辺で同じハタ科のルリハタとともに、おいしくない魚という意味で「木八束」と呼ばれている。これは「木を八束使うほどに炊いてもまずくて食べられない魚」という意味合い。2種とも見た目が派手で目立つわりに、煮ると強く縮み、硬いからではないか。また2種とも魚類体表毒を持っていることでも共通する。この他の魚と一緒にしてはいけないことからくるのかも。
    生で食べるとおいしく、また汁などにするとうまいだしが出る。
    昔は煮つけが魚料理の基本形であって、評価基準も煮るを第一としたための呼び名だと思われる。
    珍魚度 個体数が非常に少なく、めったに出合えない。

    水産基本情報

    市場での評価/流通上は非常に希に見かけることがある。一定の評価はない。
    漁法/定置網
    産地/鹿児島県、愛媛県など日本各地

    選び方

    味わい

    旬は不明。
    鱗は細かく取りにくい。皮は厚みがあって強い。骨はあまり硬くない。
    血合いの弱い白身で熱を通すと強く縮む。
    食用としたときの毒性は不明。食べるときは自己責任で。

    栄養

    危険性など

    人体におけるグラミスチンの佐用は不明である。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    キハッソクの食べ方・調理法・料理法/生食(刺身)、煮る(煮つけ)、汁(みそ汁)、焼く(塩焼き)
    食用としたときの毒性は不明。食べるときは自己責任で。
    キハッソクの刺身 水洗いして三枚に下ろし、皮を引き刺身にした。皮が硬く焼霜や皮霜には向かない。小型魚なので脂ののりがいいわけではないが、端正な身質でうま味がある。いい味だと思う。

    キハッソクの煮つけ 水洗いして、鍋に合う大きさに切る。これを湯通しして冷水に落とし、残った鱗やぬめりを流す。これを酒・しょうゆ・水で煮る。みりん、砂糖で甘味をつけてもいい。一般的な魚と同じくらいの煮つけ時間だと硬くしまりすぎる。少し長めに煮ると、少し柔らかくなる。だから「木八束」なのかも。あんがいイケル味だ。

    キハッソクのみそ汁 小型のものは水洗いして適当に切る。あらは集めて置く。湯通しして冷水に落として残った鱗をていねいに取る。これを水から煮出してみそを溶く。実にうま味豊かな汁になるが、身は硬くしまり食べにくい。
    キハッソクの塩焼き 適当に切り、振り塩をする。少し置き、じっくり焼き上げる。熱を通すととても強く縮み硬くなる。味は悪くはないものの、食べにくい。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/中田親さん(愛媛県愛南町深浦)、田中水産(鹿児島県鹿児島市 ■http://tanakasuisan-kagoshima.com/)
    『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『新・海洋動物の毒-フグからイソギンチャクまで-』(塩見一雄、長島裕二 成山堂書店 2013)

    地方名・市場名

    ヒヨリジゲ
    場所三重県熊野 備考水族志よりとして〈この魚(ねぎ)は海の巫なり。この魚海中に居るときは他の魚なし、故にいう〉 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    オキマド
    場所和歌山県、鹿児島県 備考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)にあるが意味は不明。 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年) 
    ハツチヨオ
    場所和歌山県周参見・有田 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    ナベコサゲ
    場所和歌山県和歌浦 備考〈此魚の取れる時、他の魚が取れない故に、漁業者は鍋を洗い、食することが出来ないとの意から〉『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    シュウリキ
    場所和歌山県新宮市三輪崎 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    ヨメヤサラ
    場所和歌山県有田市辰ヶ浜 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    キハッチョウ(キハツチヨオ)
    場所和歌山県湯浅 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    キハッソク(キハツソク)
    場所和歌山県田辺市・周参見・串本・新宮市三輪崎など 備考和歌山県田辺ではルリハタも同じ呼び名。〈この魚煮えがたく木八束を要すという魚〉『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    ユダヤーグァー
    場所和歌山県辰ヶ浜 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    ソネワセ
    場所長崎県 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    アブラウオ
    場所高知県須崎 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    キワシダイ
    場所鹿児島県 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
  • 主食材として「キハッソク」を使用したレシピ一覧

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