ウスメバル

Scientific Name / Sebastes thompsoni (Jordan and Hubbs, 1925)

ウスメバルの形態写真

30cmSL 前後になる。側へんし、体側背の部分に褐色斑があり輪郭は不規則。
ウスメバルの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
30cmSL 前後になる。側へんし、体側背の部分に褐色斑があり輪郭は不規則。30cmSL 前後になる。側へんし、体側背の部分に褐色斑があり輪郭は不規則。30cmSL 前後になる。側へんし、体側背の部分に褐色斑があり輪郭は不規則。
    • 珍魚度・珍しさ


      いつでも手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★
      これは常識
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目メバル科メバル属

    外国名

    学名

    Sebastes thompsoni (Jordan and Hubbs, 1925)

    漢字・学名由来

    漢字 薄目張 Usumebaru
    由来 トゴットメバルの方が先に記載されている。非常に似ているが、本種の体の斑紋はトゴットメバルと比べると薄いためではないか。
    〈軆色、殊に斑點は稍やトゴットメバルに似ているが、濃度が著しく淡いのみならず、よく見るとトゴットメバルの斑點と違っている〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
    「メバル」は目が大きく見張っているようであるため。「目春」とも書く。
    ■Sebastes joyneri Günther, 1878 ・トゴットメバルの和名は地方名からとられていて、Sebastes thompsoni (Jordan and Hubbs, 1925)・本種は魚類学的命名である。当時、東京都、神奈川県から始まった動物学、魚類学は地元の魚類を集めることから始めたので、相模湾に多いトゴットメバルの方が魚類学の世界では先に知られ、やや北に生息域を持つウスメバルは後から和名がつけられた。ウスメバルの地方名は「オキメバル」、「メバル」が一般的ではあるが和名としては他のメバルと区別がつきにくい。そのあたりからウスメバルの和名が特徴+属名となったと考えられる。
    ■ウスメバル不在の47年間の混乱は以下に見られる。
    〈SEBASTES Joyneri  たけのこめばる 東京市場〉/トゴットメバル、ウスメバル両種の可能性がある。
    〈SEBASTES SP たけのこめばる 能登〉。ウスメバルの可能性大。大方ウスメバルと考えていい。
    『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
    Jordan
    David Starr Jordan〈デイビッド・スター・ジョーダン(ジョルダン) 1851-1931 アメリカ〉。魚類学者。日本の魚類学の創始者とされる田中茂穂とスナイダーとの共著『日本魚類目録』を出版。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。水深100mほどの岩場。
    北海道南部から相模湾、駿河湾の太平洋沿岸、北海道〜対馬の日本海沿岸。
    朝鮮半島東岸・南岸。

    生態

    卵胎生で12月から1月に交尾。
    体内で5ミリほどに大きくして3月から6月に出産する。
    水深40メートルから150メートルに棲息。メバルよりも深い場所にいる。

    基本情報

    浅い岩礁域にいるメバル(クロメバル、シロメバル、アカメバル)と比べると沖合の深場にいるために沖メバル、もしくは色合いから赤メバルと呼ばれる事が多い。古くは浅海域にいる黒いメバル(クロメバル、アカメバル、シロメバル)と比べると味が劣るとされていたこともあるが間違いである。
    関東では総菜魚(一般家庭で食べるおかず)として根強い人気がある。
    かなり昔の話になるが比較的庶民的な値段の魚だったが、高度成長期には値を上げはじめ、今に至るまで安定的な高級魚でありつづけている。
    ただし高騰はしない。このあたりが総菜魚でありつづけているゆえんだと思っている。
    基本的には煮つけ用の魚とされているが、近年値段が上がったのと、鮮度がよくなったために刺身などになることも多い。
    珍魚度 一般的な魚で多少季節変化はあるものの、スーパーなど小売店で手に入れやすい。

    水産基本情報

    市場での評価 入荷はやや多目。高価。
    漁法 釣り、底曳き網
    産地 青森県、山形県

    選び方

    野締めが主流なので身が硬く、鰓の色合いが鮮やかな赤がいい。
    鮮度が落ちると色合いが褪めて白くなる。

    味わい

    寒い時期から初夏まで。特に日本海側では春から漁獲量が増え始める。
    鱗は弱く取りやすい。皮はしっかりしているが、熱を通すとすぐに軟らかくなる。骨は軟らかい。
    上質の透明感のある白身で血合いが弱くきれい。まったく臭味やクセがない。熱を通しても硬く締まらない。身自体に味があり、薄い味付けにすると本種本来の味が楽しめる。もちろん濃厚な味つけにしてもいい。
    料理の方向性
    大きくなっても30cm弱なので、丸のまま使うことが多い。基本的な料理法は煮つけと塩焼き。熱を通しても硬くならず、身離れがいいので万人向きの味。脂がのる時期は短く、歩留まりの悪さから、あまり刺身などにはならない。小振りのものは丸ごと唐揚げにすることが多い。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    煮る(煮つけ)、焼く(塩焼き、みそ漬け)、ソテー(ムニエル)、生食(刺身)、汁(潮汁、みそ汁)、唐揚げ(小型、稚魚)

    ウスメバルの煮つけ 関東では単に「めばるの煮つけ」というと本種のことであった。それが徐々に輸入魚に取って代わってしまっている。今や煮つけは高級料理。料理店で写真のものを食べると一皿数千円などということも。きめ細やかな白身で、煮ても硬くならずしっとりときめが細やかである。皮にはほどよい甘味とうま味がある。あっさりと薄味に煮ても、甘辛く濃いめの味にしても味がいい。竹の子の出回る時期に多いし、脂がのっているので合わせて煮てもおいしい。



    ウスメバルの潮汁 小振りのものはぶつ切りにする。大きなものはあらでもいい。湯通しして冷水に落としてぬめりや残った鱗を流す。水分をよく切り、昆布だしで煮出す。酒、塩で味つけする。薬味は粗挽きの黒コショウ。単にコショウでもいいし、七位唐辛子でもいい。
    ウスメバルの塩焼き 小振りのものは丸のまま。大きなものは切り身にして料理する。水洗いして二枚に下ろして骨つきの方を適宜に切る。塩をして1時間以上置く。これをじっくりと焼き上げる。皮目が香ばしい。身が固くならずほどよく繊維質で身離れがよく甘味がある。
    ウスメバルの西京漬け 水洗いして二枚に下ろし、骨つきの方を西京みそ(白みそ)の地に一日漬け込んで焼き上げたもの。地はみそ、みりん、酒で砂糖を加えるとご飯にあう。みそはお好みで。ゆず、山椒などの風味を加えてもいい。
    ウスメバルの刺身 大きいほど生で食べて美味。水洗いして三枚に下ろして血合い骨を抜く。皮を引き刺身に引く。ウスメバルの刺身のよさは甘味にあると思う。旬の時季はこれに脂の甘味が加わる。イヤミのない上品な味でかなりイケル。
    めばる子の唐揚げ(ウスメバル子の唐揚げ) 産地では稚魚が大量に取れることがある。これを丸のままさっと水洗いして、水分をよくきる。片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げにする。サクサクと香ばしく、腹もキレイなので苦みもなくおいしい。
    ウスメバルの唐揚げ 関西ではメバルやカサゴの小さいのを唐揚げにする。メバル科の魚は唐揚げにしてとても味がいい。水洗いして背開きにして片栗粉をまぶして二度揚げする。香ばしい中に身のうま味が感じられてうまい。
    ウスメバルのムニエル 旬を外した個体はバターやオイルを足し算すると、おいしく食べられる。三枚に下ろして血合い骨を抜く。塩コショウして少し置く。これに小麦粉をまぶして多めのオイルでソテー。余分なオイルを捨ててバターで風味づけする。

    好んで食べる地域・名物料理

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真煮つけの汁でおからをたく
    煮つけの煮汁でおからを炒り煮する。この煮汁でおからの煮る、は日本各地で行われている、家庭料理だ。 関東などでは煮汁を保存して、魚の煮つけに何度も使うが、これをと・・・ 続きを開く

    加工品・名産品


    ウスメバルの開き開き干し 上質の白身のうまさを遺憾なく楽しめる。[牧屋 神奈川県小田原市]

    釣り情報

    関東では外房以北での中深場「沖めばる」釣りというのは本種を釣るものである。これが相模湾ではトゴットメバルのことなのでややこしい。餌はイカの短冊かサバの切り身、これを胴つき10本ほどのフラッシャーサビキがついたハリにつける。船頭の指示する棚に下ろして待つだけの漁に近い釣りである。

    歴史・ことわざ・雑学など

    天口ふじな 山形県鶴岡市で「天口ふじな」は「大きな口あけて上を向くな」という意味だという。[いな舟 山形県鶴岡市]
    たけのこ 〈目張には赤目張と黒目張がある。ほかに灰褐色のギンギン目張(意味不明)がいるが少ない。タケノコというのは赤目張(本ページの種)のこと〉『魚の目きき 築地魚河岸60年』(伊藤勝太郎口伝 徳間書店 1984)

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『北日本の魚と海藻』(北日本海洋センター)、『魚の分類の図鑑』上野輝彌・坂本一男 東海大学出版局)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『魚の目きき 築地魚河岸60年』(伊藤勝太郎口伝 徳間書店 1984)

    地方名・市場名

    コムギ
    場所京都府間人・京丹後市峰山・久美浜・網野、兵庫県香美町香住 備考居酒屋、小売店などでは「小麦」と書くところもある。 参考聞取 
    アカガラ
    場所宮城県石巻市石巻魚市場 参考『石巻の四季のさかな』(石巻魚市場株式会社) 
    アオヤナギ
    場所富山県魚津市 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 
    メバル[目張/目春]
    場所東京都を始め関東 備考単にメバルというと本種をさすことが多い 
    ウスメバル
    場所標準和名 
    ツキゾイ
    場所青森県下北 参考青森県 
    アオマナコ
    場所青森県下北郡東通村白糠 参考青森県水産技術センター 
    アカスイ
    場所青森県八戸、宮城県塩竃市 
    テンカラ
    場所青森県小泊・尻労 参考青森県水産技術センター 
    アカガヤ
    場所青森県東津軽郡平内町茂浦 参考青森県水産技術センター 
    アカガサ
    場所青森県深浦 参考青森県水産技術センター 
    テリ
    場所青森県深浦岩崎 参考青森県水産技術センター 
    ツキ
    場所青森県鰺ケ沢・今別・牛滝 参考青森県水産技術センター 
    アダ
    場所静岡県富戸 参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 
    ツズノメバチメ[鈴ノ目鉢目?] ツヅノメバチメ[鈴ノ目鉢目?]
    場所新潟県出雲崎 備考別名、ツズノメバチメ、ツヅノメバチメだが、これは漢字で書くと「鈴ノ目張目ではないか。田中茂穂はこれを標準和名としていた。 
    アカテンコ[赤天口]
    場所山形県酒田市由良漁港 
    アカメバル[赤めばる]
    場所千葉県木更津・富津、静岡県稲取、関東の市場 備考関東の市場では本種を「アカメバル(赤目張)」、メバルを「クロメバル(黒目張)」と呼び分けることもある。 参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場、聞取 
    オキメバル[沖めばる]
    場所関東周辺の釣り宿などで 
    セイカイ
    場所新潟県上越市・糸魚川市 
    チャバチメ
    場所富山県氷見市藪田浦漁業協同組合 
    テンコ[天口]
    場所山形県酒田市酒田漁港(山形県漁業協同組合)、鶴岡市 
    メガラ
    場所岩手県山田町 
    メバル
    場所山形県酒田市酒田漁港の競り場(山形県漁業協同組合) 備考では磯にいるメバルをテンコ、本種をメバル。 
    メガラ
    場所青森県八戸、岩手県下閉伊郡山田町(小売り 2007/04/23) 
    ヤナギバチメ
    場所富山県魚津市海鮮丸和・高岡市 
    ホゴ
    参考文献より。 
  • 主食材として「ウスメバル」を使用したレシピ一覧

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