アラスカキチジ

Scientific Name / Sebastolobus alascanus  Bean, 1890

アラスカキチジの形態写真

80cm SL(体長)前後になる。キチジと比べると遙かに大型。口は大きく後端は目の中央部を超える(ヒメキチジ科は目の前縁近くにある)。断面は円形に近く上顎前縁は強くくぼむ(湾入する)。背鰭は黒ずむが明白な斑紋はない。
アラスカキチジの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
80cm SL(体長)前後になる。キチジと比べると遙かに大型。口は大きく後端は目の中央部を超える(ヒメキチジ科は目の前縁近くにある)。断面は円形に近く上顎前縁は強くくぼむ(湾入する)。背鰭は黒ずむが明白な斑紋はない。断面は円形に近い。上顎前縁は強くくぼむ(湾入する)。背鰭は黒ずむが明白な斑紋はない。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★
      がんばって探せば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目キチジ科キチジ属

    外国名

    学名

    Sebastolobus alascanus  Bean, 1890

    漢字・学名由来

    漢字 阿羅斯加喜知次、阿羅斯加吉次 Arasukakitiji
    由来・語源 阿部宗明の『新顔の魚』が和名の初出かも。アラスカ海域でとれるキチジの仲間という意味、もしくは小種名をそのまま使ったのかも知れない。
    小種名、alascanus も「アラスカの」でタイプ標本がアラスカのトリニティ島でとれたものだから。『日本産魚類全種の学名 語源と解説』(中坊徹次・平嶋義宏 東海大学出版部 2015)
    Abe
    阿部宗明(あべ ときはる Abe Tokiharu 1911-1996)。魚類学者。田中茂穂の後継者。多くの魚を記載。国内だけではなく、「新顔の魚」にて輸入、海外で漁獲される魚の魚名も多数つけている。

    地方名・市場名

    アラスカキチジ
    場所標準和名 
    ラドキン
    場所石巻市 備考石巻市の天祐丸、緒方清夫さんから、本種のことを聞いてみた。宮城は本種の開きなどの加工業が盛んなこと。これを輸入して開くのであるが、国産(地物)のものと区別するために「ラドキン」と呼ぶのだという。 
    アラスカキンキ
    場所東京都築地場内 

    生息域

    海水魚。水深100-1600mに棲息。
    北海道オホーツク海沿岸、北海道〜[岩手県宮古]・福島県、茨城県の太平洋沿岸。
    カムチャツカ半島東岸〜ベーリング海・アリューシャン列島・アラスカ湾をへてカリフォルニア半島。

    生態

    卵生。

    基本情報

    北海道が生息域の南限。流通するほとんど総てがアメリカ、カナダ、ロシアからの輸入もの。冷凍魚を扱う会社にとっては定番魚のひとつ。1975年前後に北洋での底曳き網でとり、冷凍して国内に持ち込み始めた。最初は売れなくて困る魚であったが、今や冷凍魚の中でも高価な部類となっている。
    また国産、北海道でとれるものは非常に珍しく、貴重である。
    キチジと比べると少し水分が多いものの非常においしい。
    珍魚度 国内で揚がることはめったにないので、国内産は珍魚。アメリカなどからの輸入は手に入れやすい。

    水産基本情報

    市場での評価
    輸入物/アラスカ、ロシアなどから輸入される。冷凍魚のなかでも高級なもののひとつ。
    国内産/北海道で希にとれる貴重なもの。輸入冷凍ものとは別種の味わいが楽しめる。非常に高価。
    漁法 釣り
    主な産地
    輸入原産国/アメリカ、カナダ、ロシア
    国産/北海道

    選び方

    冷凍焼けしたいないもの。見た目がやせていないもの。

    味わい

    旬は不明。
    鱗は柔らかくとりやすい。皮は厚みがあって強い。骨は柔らかい。
    赤みがかった白身。筋肉に脂が混在してやや脆弱。熱を通しても硬くならない。

    キチジとアラスカキチジの比較アラスカキチジの大きさ キチジが成長しても体長30cm前後なのに対して、体長80cmを超える大型魚。

    栄養

    危険性など

    背鰭など棘には要注意。刺されると非常に痛い。ときに長く激しく痛む

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    アラスカキチジの料理法・レシピ・食べ方/汁(しゃぶしゃぶ、潮汁)、煮る(煮つけ、肝和え)、蒸す(酒蒸し)、生食(皮霜造り、刺身)、焼く(塩焼き)、揚げる(唐揚げ)
    きんきのしゃぶしゃぶ
    アラスカキチジのしゃぶしゃぶ 皮目にうま味と甘味がある。身はあまり繊維質ではないが口のなかでとろける。しゃぶしゃぶとしては最上級の味わい。三枚に下ろして腹骨とすき、血合い骨を抜き、刺身状に切る。これを昆布だしに酒、塩味で軽く振り食べる。火の通し方はお好みで。

    きんきの潮汁アラスカキチジの潮汁 皮も骨も骨に付着した筋肉も非常に美味であるし、うますぎるだしがでる。あらは一度湯通しして、氷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを昆布だし(水でも可)で煮出して、酒、塩で味つけする。実に深みのあるだしが楽しめ、あらの身、皮も美味。
    きんきのあら煮アラスカキチジのあら煮 キチジ(キンキ)と比べると少しだけ水分が多いために煮るとやや縮むのだけが難点。上質の白身で脂がのっているので舌触りが滑らか、しかも甘味が強い。ここでは酒・しょうゆのみの味つけで、肝と一緒に煮たが、この肝の味も美味極まりない。
    きんきの酒蒸しアラスカキチジの酒蒸し 切り身にして振り塩、少し寝かせて(30分以上)、表面の水分をよく拭き取る。これを昆布を敷いた器に乗せて酒を振る。蒸し器で15分ほど。身が崩れるぎりぎりで取り出す。柑橘類としょうゆで食べる。口に入れるとほろりと崩れて非常に強い甘味が感じられ、その割りに後口がいい。
    きんきの刺身アラスカキチジの刺身 脂は筋肉全体に混在している上に、皮下での層を作っている。この脂が上質で甘味が強い。筋肉自体にも甘味とうま味があって白身の大トロといった食感、口溶けが楽しめる。
    きんきの皮霜造りアラスカキチジの皮霜造り 赤い皮目を生かして造る。三枚に下ろして腹骨、血合い骨を取る。皮目に湯をかけて急速冷凍庫(氷水に落としてもいい)であら熱を取り、皮目が落ち着いてから刺身状に切る。皮と皮下に独特の好ましい風味があり、身はとろっとして甘い。
    きんきの塩焼きアラスカキチジの塩焼き かまの部分に振り塩。約1時間置き、水分をよく拭き取ってからじっくり焼き上げた。手づかみで食べると、皮下がねっとりとして豊潤。皮に好ましい香りがある。身は適度に繊維質で舌触り滑らかでとても美味。〆の骨湯も最高にうまい。
    きんきの胃袋肝和えアラスカキチジの胃袋の肝和え 大型魚なので胃袋だけでも料理として成立する。胃袋はていねいに水洗いして湯通しする。冷水のなかで再度ていねいにヌメリや表面の脂を流す。これを細切りにしてゆでた肝と合わせる。和えるのは食べる直前がいい。しょうゆだけで食べても実に味は濃厚。柑橘類を足すと上品さが出る。

    きんきの唐揚げアラスカキチジの丸揚げ 冷凍輸入されたものを背割りにしてペーパータオルなどでくるみ水分をよく取っておく。これに片栗粉をまぶして二度揚げする。中骨や頭部の骨の一部は硬いが鰭などが香ばしく、皮下がねっとりしておいしい。

    好んで食べる地域・名物料理

    おめでたい時の魚 赤物。体色が赤いキチジ(メンメン)とメヌケ(オオサガ、ヒレグロメヌケ、バラメヌケなど)は〈タイの獲れない北国ではおめでたい時の魚として建て前や祝事におかしらつきとして出てくる魚である〉。

    加工品・名産品


    輸入キンキ冷凍 基本的にドレスかフィレで冷凍輸入されてくる。頭つきは珍しいのかも知れない。脂があるためか解凍しても劣化しないように思える。
    キンキの開き開き吉次(開きアラスカキチジ) 開いて塩味をつけたもの。このまま焼いても、調味してもいい。[カネマルスガイ 宮城県石巻市]
    きんきの開き干し開き干し 冷凍輸入したアラスカキチジを開き干しにしたもの。脂がのっていて甘味を感じる。[ヤマショウ 静岡県沼津市]
    きんき中骨煮つけきんき中骨 アラスカキチジの中骨、鰭などを甘辛く煮たもの。しょうがが聞いていて味がいい。[中井英策商店 北海道伊達市]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/緒方清夫さん(天佑丸冷凍冷蔵株式会社/宮城県石巻市)、郡山水産 水産フーズ(福島県郡山市)
    http://www.ko-suisan.co.jp/
    『原色魚類大図鑑』(安倍宗明 北隆館)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)
  • 主食材として「アラスカキチジ」を使用したレシピ一覧

関連コンテンツ