クサカリツボダイ

Scientific Name / Pentaceros wheeleri (Hardy, 1983)

クサカリツボダイの形態写真

50cm SL 前後になる。頭部は骨質板に覆われる。側扁しやや細長い。全体が茶褐色もしくは灰色もしくは黒で模様がない。[30cm SL・618g]
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50cm SL 前後になる。頭部は骨質板に覆われる。側扁しやや細長い。全体が茶褐色もしくは灰色もしくは黒で模様がない。[30cm SL・618g]50cm SL 前後になる。頭部は骨質板に覆われる。側扁しやや細長い。全体が茶褐色もしくは灰色もしくは黒で模様がない。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★
      がんばって探せば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★★
      重要
    • 味の評価度

      ★★★★★
      究極の美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目カワビシャ科ツボダイ属

    外国名

    学名

    Pentaceros wheeleri (Hardy, 1983)

    漢字・学名由来

    漢字 草刈壷鯛 Kusakaritubodai
    由来・語源 阿部宗明の命名。和名「くさかり」は東京都水産試験場に勤務していた草刈正氏が八丈島の標本を提供したことにちなんでいる。ツボダイに近い種であるために「つぼだい」がつく。
    阿部宗明は本種を新種ではなく、南極海に近い海域にいる Pentaceros richardsoni Smith, 1844 としている。
    〈1954 昭和29:底釣で釣れる通称「ケンケン」なる魚、阿部宗明博士の研究で新種と分かり、この魚に注目した八丈現業場(水産試験場大島分場八丈現業場)の草苅正の名をとり「クサカリ・ツボダイ」と命名。〉『八丈管内漁業関連史料』(平成3年3月 東京都水産試験場)
    クサカリツボダイ属(Pentaceros) 本種はクサカリツボダイ属で、Pseudopentaceros wheeleri Hardy.1983とする説がある。また加工品などで南半球のミナミクサカリツボダイ Pentaceros richardsoni Smith, 1844 も「つぼだいの干もの」となって流通する。

    地方名・市場名

    ケンケン
    場所別名 参考『八丈管内漁業関連史料』(平成3年3月 東京都水産試験場) 
    ツボダイ
    場所商品名や水揚げ地などでも。 
    ホンツボダイ[本つぼだい]
    場所商品名など 

    生息域

    海水魚。水深146-500m。
    千葉県外海域、八丈島、小笠原諸島、種子島、九州〜パラオ海嶺。
    アリューシャン列島、天皇海山、ハワイ諸島、カリフォルニア沿岸。

    生態

    クサカリツボダイは各海山で11月から2月の冬季に産卵し、産卵は毎年繰り返される。
    稚仔魚は海山の表面付近に分布。その後、海流にのって北東太平洋の表層域に移動。
    幼魚期を北東太平洋で1.5~ 2.5年ほど過ごした後、各海山海域へもどってくる。
    海山で毎年産卵し、4~5年で死亡すると考えら れている。

    基本情報

    国内海域ほか日本各地の深場から知られていた。1960年代にカムチャツカ半島からハワイ諸島北西に伸びる海山群、天皇海山で漁場が発見され、漁業対象になる。干物など加工品になることが多いが、標準和名クサカリツボダイではなく、単に「つぼだい」として表記されることが多い。また流通上も「つぼだい」である。
    初めて加工品「つぼだいの干もの」を買って食べたのは1988年青森県青森市の市場で、だ。「ツボダイ」とあったので標準和名のツボダイのことだと勘違いし、また東北地方の地魚だとばかり思っていた。
    現在でもこの混乱は流通上多々見かける。東北の遠洋漁業の産物だと知ったのは後々のこと。都内でよりも八戸漁港や石巻漁港に近い東北の方が早く干ものが流通していたのだと思う。
    近海では、鹿児島県でときにまとまってツボダイと一緒に揚がる。駿河湾や遠州灘、熊野灘などでもときどき水揚げされている鹿児島県では東北ほどではないがまとまった水揚げがある。
    漬け魚や干ものの原料として重要。特に干ものは非常に人気が高い。鮮魚は希だが、刺身などにすると非常に美味。
    珍魚度 珍魚とまではいえないが、探すとなかなか見つからない。可能性が高いのは鹿児島県などだが、手に入れるのには苦労すると思う。

    水産基本情報

    市場での評価 ときどき冷凍魚として見かけることがある。知名度がないので安い。主に干物原料として重要なもの。
    漁法 底曵網
    産地 ミッドウェー、天皇海山
    近海では鹿児島県、静岡県、愛知県、三重県
    1967年にソ連(ロシア)のトロール船で北太平洋の天皇海山(ミッドウェーからアリューシャン列島につながる)で発見され、資源開発がなされた。日本も1969年より試験的操業を始めた。1970年代こそ2〜3万トンの水揚げをみたが、その後低調なものとなっている。

    選び方

    触って張りのあるもの。鰓がきれいなもの。目が澄んでいるもの。

    味わい

    旬は不明
    腹と背の鱗は薄くて弱い。胸鰭下に硬い骨鱗がある部分があり、下ろすのに邪魔になる。骨はあまり硬くはない。
    透明感のある白身で脂が均等に入る。熱を通しても硬く締まらない。身離れもいい。
    ほぼすべてが遠洋でとれたものなので、生食などができるものは希少。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    クサカリツボダイの料理・レシピ・食べ方/刺身(新鮮なものなら)、焼く(塩焼き、干物)、煮る(煮つけ)、汁(みそ汁、潮汁)、ソテー(ムニエル)

    クサカリツボダイの刺身 遠洋ものが多いが近海ものはは刺身になる。水洗いして三枚に下ろす。腹骨と血合い骨を取り、皮を引き、刺身にする。脂は皮下、筋肉に密に混在して乳白色となっている。切り身を舌に乗せると溶ける。この口溶け感が甘さと感じられる。

    クサカリツボダイの塩焼き 水洗いして適当に切り、塩を振る。1時間以上、できれば1日寝かせる。これをじっくり焼き上げる。中から脂が染み出してきて、表面が泡立ち、揚げたように香ばしくなる。身は豊潤で液化した脂に甘みがある。
    クサカリツボダイの煮つけ 水洗いして適当に切る。頭部は骨質板が多いのであえて使わなくてもいい。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく切り、酒・醤油・水で煮る。みりん、砂糖で味つけしてもいい。煮ても硬く締まらず、身離れがいい。皮と身自体にもうまみがあってとても味わい深い。
    クサカリツボダイの潮汁 あらなどを集めて置く。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、昆布だしで煮だして酒・塩で味つけする。うま味豊かだが後口のいい汁になる。
    クサカリツボダイのムニエル 水洗いして三枚に下ろして適当に切る。塩コショウして小麦粉をまぶして多めのあぶらでじっくり香ばしくソテーする。仕上げにバター(マーガリン)で風味づけ。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    1982年と1988年に行った青森市では地魚「つぼだい」として干ものが売られていた。加工品などで長らく正体がわからずにいたが、築地を歩くようになり、大手の水産会社でも扱っていること。標準和名がクサカリツボダイであることを知る。
    つぼだい塩蔵品 背骨を半割にして開いた塩蔵品。脂があって焼きものなどにする。[金波水産 千葉県銚子市]

    つぼだいの干もの 1960年代から作られ始める。クサカリツボダイとツボダイ、ミナミクサカリツボダイが原材料である。クサカリツボダイの方が圧倒的に多く、他の種は少ない。開きもあるが半身のものの割合が高い
    つぼだいの干もの 開き干しと片身とがあり、開き干しは非常に少ない。白濁しているのは脂が均質に入っているため。1980年代には東北などで普通に売られていて、近年では高級品となっている。ミッドウェー産。[甲印小西商店 千葉県銚子市]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    安値 〈物価高の1969年でも、1キロ35円、無頭ものは1キロ60円で取引されていると聞き、あまりの安さに驚いたことがある。阿部宗明〉『新顔の魚』(伊藤魚学研究振興財団)

    参考文献・協力

    協力/石田拓治さん(印束商店 長崎県長崎市)
    『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会)
    『おさかな通信』(水産総合研究センター 平成17年2月9日)、『第62回遠洋水産研究所談話会要旨 クサカリツボダイの資源生物学的特性について』(柳本卓)
  • 主食材として「クサカリツボダイ」を使用したレシピ一覧

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