マイワシ

代表的な呼び名イワシ

マイワシの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
紡錘形、細長い。いわゆるイワシ型。背は黒く、腹は銀白色。鰭(ひれ)に棘(とげ)がなく、背鰭は身体の中心にある。胸鰭、腹鰭、尻鰭が離れてある。30センチ前後になることも。写真は「斑紋のないタイプ」。体側の斑紋はあるものと、ないタイプがある。
「斑紋のあるタイプ」。

光りもの/江戸前ずしで酢でしめる仕事の対象となる魚。古くから江戸前で水揚げされていた

全関連コラム

珍魚度・珍しさ
いつでも手に入る
魚貝の物知り度
知らなきゃ恥
食べ物としての重要度 ★★★★★
非常に重要
味の評価度 ★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱真鰭区ニシン・鰾下区ニシン上目ニシン目ニシン科マイワシ属
外国名
英名/Sardine,Spotline sardine
学名
Sardinops melanostictus (Temminck and Schlegel,1846)
漢字・学名由来

漢字 真鰯、真鰮 Maiwasi
由来・語源/一般的な呼び名。特に魚河岸などで使われていたものだろう。ウルメイワシ、カタクチイワシと区別するためにもっとも一般的な鰯という意味で真を冠した。
〈イワシ科マイワシ属マイワシ〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
魚鑑 〈鰯の字を用ゆいわしよわしの転するにて、此魚性(もちまえ)至て、脆弱なる故に名づく、俗におほそおむらともいふ〉。このよわしはカタクチイワシにもウルメイワシにも共通する。「真」はイワシ類(カタクチイワシ、ウルメイワシなど)の代表的なものの意。
卑しい 「いわし」は「卑しい(いやしい)」の転訛したもの。
学名はSardinops sagax (Jenyns, 1842)/South American pilchard である可能性が高い。
英名/sardine or pilchard マイワシ属はサーディン、もしくはピルチャード

Temminck
コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。沿岸。
北海道〜九州南岸の大平洋、日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海。
沿海州、サハリン、千島列島、朝鮮半島東岸・南岸、済州島、黄海中国沿岸、台湾。

生態

■ 産卵期は少ないながら秋口から、主に12月から6月まで。産卵数は3万から5万粒。産卵期に数回に分けて産み出される。
■ 孵化したばかりの頃は体長(以下略)2ミリほど、半年で6センチ前後になる。1年で8センチから12センチ。2年から3年で20センチ前後に育つ。
■ 7歳〜8歳と高齢魚が存在するが、普通は3〜4年が寿命。
■ 沖合、沿岸域を回遊しながら動植物プランクトンを摂取(食べて)いる。

基本情報

琉球列島をのぞく海域で水揚げのある小型魚だ。
世界的に見ると北太平洋でもっとも普通にみられるSardine(サーディン)といえそうだ。太平洋東部にいるカリフォルニアマイワシの亜種とされることもあり、検討されている。
古くから日本漁業の中心を担っていた魚で大量に揚がり、様々な魚の餌ともなるので海の牧草などとも言われている。好不漁の波はあるものの漁獲量が多いため鮮魚、加工品(ひらご煮干、丸干し、総菜)、飼料などになり重要な魚種である。日本各地に本種を使った郷土料理があり、また節分を初めとする祭事にも使われている。
現在も飼料となっているものの、流通の発達から鮮魚としても人気が出て低価格魚ではなく中級魚となり、ときに高値がつく。
2023年現在、やや豊漁感があり、年間を通していいものが手に入る。価格的にはほどほどの値段なので日常的にも利用できる。
珍魚度 一時期非常に漁獲量が落ち込んだときがあるが、今や全国的に豊漁である。いつでも手に入る。

水産基本情報

市場での評価 鮮魚は途切れることなく入荷してくる。値段は平均的なものか、やや高値。春先から晩春へかけては少し入荷が不安定になり非常に高騰することがある。
漁法 きんちゃく網、巻き網、定置網
主な産地 北海道、千葉県、大阪府、兵庫県、石川県、岩手県
ときに高値になる 普段も決して安い魚ではないが、春に非常に高値となることがある。卸値kgあたり3800円は小売店では1尾1000円前後になる。

選び方・食べ方・その他

選び方

太って丸みを帯びたもの。触ってぬめっとした感触のものがいい。細く硬いものは脂が少ない。
鮮度はつやのないもの、脂焼けしやすいので色合いの鈍いもの、目が赤いもの、黄色みががかったものは避ける。
鰓に赤身がなく、黄色くなったものもダメ。

味わい

一地域だけを見ていると旬はあるが国内全域で考えると旬はない。福岡県などでは寒い時季が旬という人がいるし、日本海側では春にもいいマイワシが揚がる。千葉県・東京都・神奈川県で入梅鰯というが、これも最近あやしくなってきている。
味の落ちる期間があるからこその旬だとしたら、国内全域で考えると本種の旬は消滅している。あえていえば周年旬。地域毎に違っている。年間を通して脂ののったものが手に入る。
鱗は薄く取りやすい。皮は薄いが弱い。中骨以外は柔らかくあまり気にならない。
血合いが大きくやや赤みがかる。脂は皮下に層を作り筋肉全般に混在する。

栄養

栄養成分
・ビタミンB2、B6、B12、D、Eが豊富。
・鉄、カルシウムが豊富。
〈機能性成分〉
・IPA(EPA)、DHAが豊富。IPA(EPA)、DHAには動脈硬化の予防(血液をサラサラにする)、中性脂肪を下げる効果がある。
・メタボリックシンドロームの予防、改善をしたい人にお勧め。
血液をサラサラにし動脈硬化の予防、中性脂肪を下げる効果があるIPA(EPA)、DHAが豊富に含まれる。貧血を予防する鉄分、またカルシウムが多い。肌の健康を保つビタミンA,ビタミンB2、そのたビタミン類が豊富。貧血を予防する鉄分、骨粗鬆症を予防するカルシウムが豊富。

危険性など

食べ方・料理法・作り方

マイワシの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、カルパッチョ、なめろう、ぬた、酢じめ)、焼く(塩焼き、干もの)、汁(ちり、潮汁、みそ汁)、煮る(煮つけ、みそ煮、梅干し煮)、揚げる(フライ、かき揚げ、天ぷら、唐揚げ)、ソテー(オリーブオイル焼き、フライパン蒲焼き、ムニエル)、オイルサーディン
大羽いわしの刺身(マイワシの刺身) 太平洋沿岸では6月になり、梅雨が近いなと思う頃から、脂がのってくる。春に産卵を終えて、脂がぬけた固体は飢餓状態から盛んにエサを追いかける。徐々に体を太らせ、脂も蓄えて、梅雨時においしくなるのだ。この梅雨時から晩秋くらいまでが大羽・中羽いわしの旬だ。脂は皮下に層になり、身全体に混在するので柔らかく、口溶け感がある。

小いわしの刺身(マイワシの刺身) 秋から冬にかけて入荷してくる小イワシの刺身。マイワシは大きいほどうまいとは限らない。手開きして小骨を抜き、皮をむいて出来上がりという簡単なもの。しょうががいちばん合うと思うが、ねぎ、わさびなどと合わせてもいい。
鰯のぬた(マイワシのぬた) 生のイワシを軽く塩でしめ少し置き、表面の塩をさっと水洗いして流し、水分をよく切る。青い野菜と合わせてぬたにしたもの。酢みそは、みそ・みりん(砂糖)・酢で辛子を加えてもいい。都内では江戸甘味噌、中部では豆みそ、西日本では麦麹のみそを使うこともあるが、土地土地のみそを使うのが粋。
イワシのマリネ(マイワシのマリネ) 手開きして塩でしめた片身を、マリナードに半日漬け込んだもの。マリナードはワインビネガー、マルサラ酒、白ワイン、砂糖、乾燥タイム、乾燥ディルを合わせたもの。マリナードに漬け込んだ玉ねぎのみじん切りとケーパー、赤唐辛子を和えたものを添えた。白ワインにとても相性がいい。
りゅうきゅう(茶漬け/マイワシのづけ) 三枚に下ろした身の小骨を抜き、小さめに切りつける。これをしょうゆ、みりん、ごまの地につけ込んだもの。これをご飯にのせてそのまま食べる。また茶漬けにしてもいい。
鰯の塩焼き(マイワシの塩焼き) 水洗いして振り塩をして1時間以上寝かせて焼いたもの。一般家庭で見た目にこだわらなければ、鰭は切り取って焼いた方がやりやすい。大根おろし、柑橘類で食べるとすこぶるつきにうまい。エキストラバージンオイルをたらして食べてもいい。
鰯の干もの(マイワシの干もの) 水洗いして背開きにして立て塩につけ込む。水分をよく切り、一夜干し(半日前後干し)にしたもの。適度に水分がぬけて、塩とよく馴染む。焼くと干したことで独特の風味が生まれる。
鰯のつみれ汁(マイワシのだんご汁) マイワシを三枚に下ろして細かくたたき、水溶き片栗粉、やまいも、塩(みそ)などを加えてだんごにする。これを昆布だしに落として煮る。根菜類をたっぷり使いたい。市販のすり身を使ってもいい。滋味豊かで実に美味だ。
鰯のすまし汁(マイワシの潮汁) 水洗いして適当に切り、湯通しする。これを昆布だしで煮だして、酒と塩で味つけしたもの。少し薄口しょうゆを加えてもいい。マイワシがこんなに上品な汁になるのかと驚くはず。
鰯の梅干し煮(マイワシの梅干し煮) しょうゆ味の煮つけを作るときに梅干しの果肉を加える。梅干しの酸味と風味が臭い消しにもなるし、後味をよくしてくれる。梅干しの塩分があるので調味は控えめにするといい。ご飯のおかずに最高!
いわしのしょうが煮(マイワシのしょうが煮) 小羽の頭部と内臓を取り、たっぷりのしょうがのせん切りと水分が少なくなるまで煮上げたもの。じっくり煮ることで骨が気にならず保存性が高い。ご飯にも合うのでお弁当に格好のもの。
いわしのフライ(マイワシのフライ) アジフライほどではないが、洋食の世界では準定番的なメニュー。水洗いして手開きにして、ていねいに小骨などを取る。塩コショウしてバッター液(卵・水・小麦粉で作った衣。サラダ油を加えてもいい)をからめてパン粉をつけて揚げたもの。脂がのっているものを使うとさくっとしたパン粉の下にジューシーで甘味のある身のうまさが楽しめる。
鰯の天ぷら(マイワシの青じそ揚げ) あまり大きくないものがいい。水洗いして手開きにして小骨をていねいに抜く。水分をよくきり、小麦粉をまぶして、青じそを巻き込み、衣をつけて揚げたもの。梅肉で食べる。ポン酢や柑橘類を落とした天つゆで食べても美味しい。
いわしのミンチカツピーマン詰め(マイワシのメンチカツ) 水洗いして手開き、片身にして背鰭周り、中骨を取る。細かく切り、ミンチ状に包丁で叩く。湿らせた食パンもしくは水を抜いた豆腐に小麦粉、ナツメッグ、カイエンヌペッパー、塩で味つけしてまとめ上げる。これに衣(卵・小麦粉・水)を絡めてパン粉をつけて揚げる。ここでは大きめのピーマンにつめて揚げた。
いわしのかき揚げ(マイワシのかき揚げ) 早春から初夏にかけて小指ほどの若魚がとれる。これを産地では塩ゆでにして干しているが、鮮魚としてもとても優れもの。さっとザルなどに入れて洗い。水分をよくきり、好みの野菜などと合わせて衣をつけて揚げる。香ばしく、しかもうま味豊かだ。
いわしのハンバーグ(マイワシのハンバーグ) 脂のあるなしに関係なく作れておいしい。水洗いして手開き。中骨・背鰭周りの骨を取る。腹骨・血合い骨などはそのまま細かく切り包丁で叩く。牛乳で湿らせた食パン食パン、玉ねぎ、マシュルームに塩・カイエンヌペッパーもしくはコショウを加えてたたき混ぜる。これを大目の脂でソテー、仕上げにバターで風味づけする。
鰯のフライパン蒲焼き(マイワシの蒲焼き) うなぎの蒲焼きに見立てたもの。マイワシを開いて腹骨などを取り、小麦粉をまぶしこんがりとソテーして取り出す。ここにみりん、酒、砂糖、しょうゆを合わせたものを入れて少し煮つめたところにソテーしたものをもどしてからめる。とてもご飯のすすむおかずだ。
いわしのムニエル(マイワシのムニエル) 小羽を水洗いして三枚に下ろして塩コショウ、小麦粉をまぶしてソテーしたもの。簡単、短時間に出来るので朝食のワンプレートなどにもってこいだ。
いわしのオイルサーディン(マイワシのオイル漬け) 頭と内臓を取り、強い塩をして半日ほど置き、水洗いして水分を切る。オリーブオイル・ハーブ類(月桂樹、ローズマリー・粗く砕いたコショウ)で低温で1時間くらい熱して、そのまま寝かせたもの。半月くらいは持つ。
いわしのオリーブオイル焼き(マイワシのソテー) マイワシの頭部と内臓を取り、塩コショウしてオリーブオイルでじっくりとソテー。ソース代わりに甘味の強いトマトをつぶしたものをのせた。トマトと和えながら食べる。まだ若い安赤ワインがとても合う。

好んで食べる地域・名物料理


水なます マイワシを三枚に下ろして皮を剥く。皮はそのままでもいい。端から薄切りにする。みょうが、ねぎ(玉ねぎでもいい)を刻んでおく。水にみそを溶き、氷などできりきりに冷やす。ここにマイワシの身、野菜を加える。ご飯にかけて食べると実にうまい。
いわしのみそたたき(なめろう) 三枚に下ろした身を細かく切り、ねぎ(玉ねぎでもいい)、みょうが、青じそなどとみそを加えてよく切れる包丁で叩いたもの。主に太平洋側で食べられているもの。
いわしのさんが焼き みそと香りのある野菜を使って、細かくたたいて「なめろう(みそたたき)」を作る。それを青じそ挟んで焼き上げたもの。フライパンでソテーすることも多い。千葉県では「さんが焼き」用のすり身も売っている。
いわしのちり 福岡県福岡市、筑紫野市などで作られている。小倉では「いわしの湯豆腐」とあるがほぼ同じ物だ。たっぷりの野菜とマイワシを昆布だしで煮ながら食べるもの。福岡県沖で冬に旬を迎えるマイワシを野菜の鍋に加えたといった感じだ。寒い時季にビタミンや優良なタンパク質、脂をとることができる。『聞き書 福岡の食事』

いわしの塩炒り(はまいり) 小振りのマイワシを使うとよい。やや塩辛い塩水で茹で、一度塩水を捨てて、水分を飛ばしたもの。酢と大根おろし、醤油で食べる。福井県、石川県金沢、能登の郷土料理であるが、とてもうまい。
茶漬け 福桶県北部宗像市では「茶漬け」、愛媛県では「りゅうきゅう」、大分県では「りゅうきゅう」、「あつ飯」などと呼ばれるものは、基本的に生の切り身をしょうゆ、みりん、酒などに漬け込んでご飯にのせて食べるという意味合いで共通している。これは切り身をみりん、しょうゆの地につけ込んでごまを加えたもの。ご飯にのせてそのまま食べてもいいし、茶漬けにしてもうまい。
サツマイモとイワシ 鹿児島県ではサツマイモを主食としたとき、イワシの干ものをおかずとする。この場合のイワシはマイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの3種とも当てはまると思われる。
いわしのぬかみそだき(じんだ煮) 福岡県北九州市小倉で作られているもの。九州では信濃から来た小笠原家の影響から、小倉だけがぬかみそを漬ける習慣がある。その漬物に使ったぬかみそとしょうゆなどでマイワシを煮たもの。他にはマサバ、ゴマサバ、タイセイヨウサバなどでも作る。北九州市小倉の黄金町、旦過市場などで買える。
イワシの刺身(酢締め) 八王子市諏訪町では、丸干しのマイワシを手開きにして、そのまま酢に漬け込んだ。これを「いわしの刺身」としていたという。八王子市は八王子駅のあるあたりは新しく開けた場所で、八王子城のあった西部、諏訪町、千人町、元八王子町などが古い。[東京都八王子市諏訪町]

加工品・名産品

干もの、魚醬、オイルサーディン、缶詰、総菜類など加工品は多種多彩
【魚醬】
しょっつる(塩汁) 秋田県で作られるマイワシ、もしくはハタハタなどから作られている魚醤。
【しらす】
釜揚げ 稚魚を塩ゆでして干していないもの。ゆでただけのものを釜揚げという。酢醤油、柑橘醤油、生姜醤油などで食べる。[徳島県、和歌山県、高知県]
しらす・ちりめん 「しらす」はウナギ、ニシン目の魚などの稚魚の総称であるが、食料品としては「しらす干し」「ちりめん」などのイワシ類の稚魚のことをいう。その「しらす」でいちばん多いのがカタクチイワシ、次にマイワシ。ときにウルメイワシの稚魚も使われるが少ない。マイワシが少ないのは産卵孵化後、稚魚が広域に分散する性質があるため。
【練り製品】
いわしカツ 長崎県。マイワシのすり身をフライにしたもの。[長崎市杉蒲]
釜揚げ 3〜4cmほどのマイワシの幼魚を塩ゆでにして放冷、少し干したもの。カタクチイワシのしらす干しに近い。しょうがのしぼりじると柑橘類で食べるととてもおいしい。和歌山県で「こびらじゃこ」、徳島県で「ひらご」と言う。[橋市商店 和歌山県田辺市]
小平かえり(こべらかえり。小平じゃことも) 徳島県、和歌山県などで買っている。その年に生まれた小さなマイワシを塩ゆでにして放冷したもの。徳島県では春の味覚。水揚げされてすぐに塩ゆでされたもので、苦みが少なく非常に味わい深い。絶品である。[大善 徳島県海部郡海陽町宍喰]
平子煮干し(ひらごにぼし) 小振りのマイワシを塩ゆでして干し上げたもの。見た目よりも軽くて上品なだしが出る。
糠いわし(こんかいわし、へしこいわし) 石川県輪島市輪島朝市で売られていたもの。比較的糠が乾燥している。塩分濃度は非常に高い。京都府、福井県、石川県、富山県、新潟県、秋田県などで作られている。山間部の福井県大野市川合では「古くからよく食べていた。昔はサバやニシンのぬか漬けはなかった」という。[京都府、福井県、石川県、富山県、新潟県、秋田県]
マイワシの丸ぼし
鰓から口に刺す頬刺し(長崎市では古く、唐人干といった)が多い。マイワシの加工品でもっともよく見かけるもの。うま味が逃げにくく、内臓のうま味・渋みも楽しめる。千葉県産が多い。[越田鮮魚店 岩手県大槌町、高橋水産 大分県佐伯市]
いわし節 「いわし節」はウルメイワシ、マイワシ、カタクチイワシを煮て、燻煙して干したもの。関東では雑節として他の節と混ぜて使うが、中部以西では好んでだしように使う。特にうどんなどの小麦粉を使った麺類に合う。
マイワシの開き干し
意外にマイワシの開き干しは少ない。焼き上がりが早く、内臓がないので食べやすい。[丸安 千葉県銚子市]
塩もみいわし マイワシを丸ごと塩漬けにしたもの。北海道では干ものよりも塩漬け(塩蔵品)の方が多いのではと思う。北海道の塩蔵品はみな絶品であるが、その最たるもの。塩分濃度、本来の豊かなうま味などに満ちている。[厚岸 マルスイ 北海道厚岸郡厚岸町]
ぬかいわし(いわしのぬか漬け) 新潟県の「ぬか漬け」は水分が多くしっとりしている。これを焼いて食べる。
丹後オイルサーディン 宮津市では古くから「金樽いわし」で名高かった。それで作ったのがオイルサーディン。「大極殿マークのオイルサーディン」として輸出されていた。その伝統を引き継いでいるのではないかと思う。非常に上質なものでほどよい軟らかさでマイワシのうま味が生きている。[竹中缶詰 京都府宮津市小田宿野]
いわしのうの花漬 イワシの酢漬けを味つけしたおから(うの花)に漬け込んだもの(まぶしたもの)。[入二商店 千葉県山武郡九十九里町]
よしる、いしる 能登半島で作られる魚醤(ぎょしょう)「よしる」の原料。「よしる」はしょうゆのようにつけて食べる。鍋物の味付けに、また野菜など漬け物の味付けにも使われる。能登半島で作ったスルメイカ、マイワシの「いしる(いしり)」、秋田県でマイワシ、ハタハタで作られている「しょっつる」、香川県でイカナゴから作られている「いかなご醤油」を日本三大魚醤という(ただし初出や誰が言い始めたかなどは不明)。
シダ いわし角煮 マイワシの角煮が3粒ずつ入っている小分けパック。とても美味しく、簡便でお弁当などに最適。[信田缶詰 千葉県銚子市]
生姜煮 『ふじっ子』。生姜煮をレトルトパックにしてもの。
手詰めいわし醤油味付け 味つけがほどよく、食べやすい。マイワシの味もとてもいい。[木の屋 宮城県石巻市]
イワシのハンバーグ イワシの身を粗挽きにして、玉ねぎなどを合わせてハンバーグにしたもの。マイワシを使った加工品の定番であり、多くのメーカーから出ている。
イワシカレー イワシの身を日本風の普通のカレーに仕立てたもの。マイワシの臭味がカレーの風味で消えて、ご飯にもパンにも合う。酒の肴にも向いている。千葉県銚子市の名物ともなっている。[信田缶詰 千葉県銚子市]
糠づけいわし 石川県輪島市輪島朝市では漬け込んだ樽漬けのものを、量って買える。そのまま焼いて食べてもいいし、汁や煮ものなどの調味料としても使える。

釣り情報

防波堤(波止)などからのサビキ釣りで狙うもの。群れの回遊次第では面白いように釣れる。
船からはあまり狙わないのだが、相模湾などでは春先にサビキ仕掛けで狙う。

歴史・ことわざなど

女房言葉 室町時代初期から宮中奉仕の女官が、主に衣食住に対して使った隠語で「御紫(おむら)」、「紫(むらさき)」、「御紫(おむら)」。
紫式部 夫の藤原宣孝の留守に鰯を焼いて食べていたら、突然帰宅してきた。宣孝が「そんな卑しいものを食べて」と叱ると歌で抗議した。これから鰯を「御紫(おむら)」、「紫(むらさき)」と言うようになった。
和泉式部 (平安期の女流歌人)鰯くいし歌」として「日のもとにはやりまいらせ給ふいわし水まいらぬ人はあらじとそ思う」「ひのもとにいわれ給ふいわし水まいらぬ人はあらじとそ思ふ」と歌で抗議した。
鰯雲(いわしぐも) 巻積雲のことで小斑紋状になるもの。鰯大漁の前兆と考えられた。
「鰯の頭も信心から」 鰯の頭のようなつまらないものでも信心すれと、ありがたく思える。
「鰯で精進おち」 些細なことで禁戒を破ること。
「入梅いわし」 関東ではマイワシの旬は6月から。この6月初旬のものをとくに「入梅いわし」という。
大黒様のお歳夜 毎年12月9日は大黒様が嫁取りをする日とされていて、豆料理とハタハタの田楽、米いり(ポン菓子)などを食べる。鶴岡の旧家ではハタハタではなく、「いわしの丸干し」を食べる。これは質素倹約の意味があるようで、旧家ほど節約にいそしむということの現れ。[ごとう鮮魚店 山形県鶴岡市]
手々嚙むイワシ 大阪市長堀橋北詰では、〈朝早うから「手々嚙むイワシ」いうて魚売りが来る。〉。手に噛みつくほど新鮮なイワシという意味。カタクチイワシである可能性もある。『船場大阪を語りつぐ 明治大正昭和の大阪人、ことばと暮らし』(構成・文/前川桂子 監修/近江晴子 和泉書院)
季語・歳時記 秋。あくまでも俳諧の盛んだった江戸周辺では秋に漁があっただけのことではある。
海の牧草 一時は「海の牧草」などと例えられるほどに、たくさんとれたもの。
イワシの高騰 マイワシの値段が上がったのは、とれなくなったためだけではなく、刺身で食べられるようになったせいだ。
日本最大 マイワシの最大記録は1988年に島根県浜田市にあがった35.8センチ、重さ343グラム。
正月に塩鰯 〈塩鰯を一匹宛膳につけ尾頭付きとして祝う。残しの塩は汁物のだしに使う〉[徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)]
ひなさまの供えもの 岐阜県旧益田郡萩原町・小坂町では雛の節供に「鰯の干もの」を供えた。小坂町では、菱餅、あさつき、小豆めし、おひら(豆腐、油揚げ、ちくわ、切り昆布、里芋)、豆いり(大豆)、やこめ(せいなを蒸し、干して炒ったもの。せいなは粃のこと)『小坂の文化 四季と味』(小坂の文化「四季と味」編集委員会 2003)
■ 年間400万トン、国内の全漁獲量の3分の一にも上り、食用、鮮魚としてだけではなく、肥料、飼料(家畜のエサ、養殖魚のエサ、釣りのコマセ)などにもなった。
それが2008年には年間10万トンを切り、鮮魚で出回るに、時に高級魚の仲間入りをすることもある。このように好不漁の周期があるのがマイワシの特徴でもある。
■ 日本の漁業が紀伊半島和歌山県から、この魚を漁獲することで進展してきたことは明らか。茹でて油を絞り、干したものが禁近畿地方で木綿の肥料として使われ、木綿の生産料を飛躍的にのばし、庶民でも高性能な衣類が手に入るようになった。養殖魚や畜産の飼料、日常でも丸干し、煮干し(ひらご)などの加工品、鮮魚としても最重要魚であろう。
■ フィッシュミールの原料であった。すなわち家畜、養殖魚の飼料となっていた。
■ 紀州和歌山県などで始まったマイワシ漁。とった「干粕(ほしかす)」、「干しか(ほしか)」になった。「干しか」は当時はじまった綿花栽培、菜種栽培の重要な肥料であった。
節分
■節分に鰯の頭をヒイラギ(柊)の枝にさし、戸口に立てる習慣がある。節分に訪れる鬼がヒイラギの棘で目を刺し、鰯の臭いで逃げ出すように、という魔よけ。
■ヒイラギと豆の茎(豆を収穫した後の枝や茎)を束ね、豆の枝に鰯(カタクチイワシ、マイワシ)を刺す。鰯は八王子では基本的に干もので、焼いて頭部だけを刺す。ヒイラギは葉に棘があるので鬼が痛くて屋内に入って来られない。鬼は鰯の臭いが嫌いなので、玄関に刺しておくと入ってこない。
■群馬県。鰯を焼いて身は夕食の皿につけ、頭をヒイラギ(豆がらの枝のところもある)の枝にさし、つばをかけるとジュッと音がするほどにいろりで焼き、「米、麦、粟、稗、黍、五穀の虫の口を焼き申す」、「のみしらみ、口やぎり。へび、むかぜの口やぎり」等とその地方に合ったことを唱えてつばを吹きかけ、頭がジュジュっと音を立てると次の者に渡し、同じ事を順々にいろり端で唱えて家族全体が焼く風習がある。最後にはこれを軒下にさして厄除けにする。『群馬のたべもの』(武藤典 みやま文庫)
掛の魚(懸の魚) 徳島県の一部ではマイワシを2尾、藁で束ねて「掛の魚」とする。年末に飾り、正月をこすと食べるとのこと。鯛、鰹(マルソウダ)、エソなどもある。

地方名・市場名

イワシ
参考聞取、文献 場所一般に。青森県、東京、神奈川県江ノ島・小田原、富山県、下関、有明海 
コビラ
サイズ / 時期8cm前後 参考文献 場所三重県尾鷲 
トレンゴオ
参考文献 場所三重県尾鷲、和歌山県辰ヶ浜 
カブダカ
参考文献 場所和歌山 
シロイワシ
サイズ / 時期10~12cm 場所和歌山県和歌山市 
ヒラ
参考文献 場所宮城県、静岡県内浦 
ラシャ
参考文献 場所広島県 
オラシャ
参考『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 場所広島県賀茂郡 
コベラ[小平]
サイズ / 時期5cm-8cmの若魚 場所徳島県海部郡海陽町宍喰 
オイザサ オイワシ
参考文献 場所新潟 
ドコ ドオコ
参考文献 場所新潟県 
イワシゴ
サイズ / 時期幼魚 参考文献 場所有明海 
モロクチ[諸口]
備考カタクチイワシに対して。 参考『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 場所東北地方 
オオイワシ
参考文献 場所神奈川県三崎、大阪府和泉、長崎県壱岐 
ヤシ
備考鰯の語源を「いやし」、貧(いや)しき魚とする説があり、「いやし」を略して。 参考『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 場所福島 
マイワシ
備考標準和名。 参考聞取、文献 場所関東を始め一般に。秋田県象潟、富山県氷見・新湊・東岩瀬・生地・魚津 
ユワシ
参考『青森県 さかな博物誌』(日下部元慰智 東奥日報) 場所青森県 
ヒラレ
参考文献 場所静岡県浜名湖 
コビライワシ コビラ[小平/小平鰯]
場所静岡県由比 
ギンムシ
参考文献 場所高知県柏島 
シラサ
参考文献 場所高知県須崎 
リョウクチ[両口]
備考カタクチイワシに対して。 参考『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 場所鹿児島 
ツユイワシ[梅雨イワシ] ツユイリイワシ[梅雨入りイワシ]
サイズ / 時期梅雨 備考味が良くなる時期として梅雨イワシ、梅雨入りイワシ。九州、日本海など当てはまらない地域が多く、あくまでも東京中心の俳句などの世界での話で、あまり意味のない言葉だ。 場所関東周辺もしくは太平洋側の一部 
ヒラゴ ヒラゴイワシ[平子鰯]
参考聞取、阿波学会研究紀要・由岐町の魚類と淡水エビ類、聞取、三重県『東紀州のお魚リスト』 場所青森県、日本海、三重県東紀州、徳島県由岐町 
ナナツボシ[七つ星]
場所関東の市場 
キンタル[金樽] キンタロウ[金太郎]
場所京都府宮津天橋立周辺 
キンタロウイワシ[金太郎いわし]
備考大阪では大阪湾で揚がるものをいう。また小振りで脂ののっているものも。 場所大阪市布施・豊中市庄内豊南市場 
ヒライワシ
参考文献 場所宮城県仙台 
コバイワシ[小羽鰯]
サイズ / 時期8~12cm 備考【出世魚】【出世魚】小羽鰯(コバイワシ)→中羽鰯(チュウバイワシ)→大羽鰯(オオバイワシ) 場所一般に 
チュウバイワシ[中羽鰯]
サイズ / 時期15~18cm 備考【出世魚】【出世魚】小羽鰯(コバイワシ)→中羽鰯(チュウバイワシ)→大羽鰯(オオバイワシ) 場所東京千葉など一般に 
オオバイワシ[大羽鰯]
サイズ / 時期20cm以上 備考【出世魚】小羽鰯(コバイワシ)→中羽鰯(チュウバイワシ)→大羽鰯(オオバイワシ) 場所東京、千葉 
コビラジャコ
サイズ / 時期3cm以上 備考【出世魚】3cm以上のしらす(白い稚魚)ではなく銀色になったもの。 場所和歌山県田辺市 
タツクチ サイズ / 時期5~8cm 
コチュウバイワシ[小中羽鰯] サイズ / 時期12~15cm 
ニタリイワシ[にたり鰯] サイズ / 時期18~20cm 
備考【出世魚】