ホタルジャコ

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14cm SL 前後になる。体高は普通でやや細長い。肛門は畳まれた腹鰭の先端とつけ根の真ん中あたりにある。
14cm SL 前後になる。体高は普通でやや細長い。肛門は畳まれた腹鰭の先端とつけ根の真ん中あたりにある。
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ホタルジャコ科ホタルジャコ属
外国名
英名/Lanternbelly, Glowbelly 日本發光鯛、大面側仔、目本仔、深水惡、目斗仔(澎湖)
学名
Acropoma japonicum Günther,1859
漢字・学名由来

漢字 蛍雑咽 Hotarujako
由来・語源 田中茂穂は高知県での呼び名だとしている。発光バクテリアを共生させていて、光るために「蛍」であり、小魚で身が柔らかく雑魚(ざこ)のたぐいであるため。

Günther,
Albert Karl Ludwig Gotthilf Günther (アルベルト・ギュンター 1830-1914 ドイツ→イギリス)。動物学者。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。大陸棚。
対馬〜九州西岸、千葉県外房〜九州南岸の太平洋、瀬戸内海。
朝鮮半島東岸南部、済州島、黄海、東シナ海、台湾、紅海、東シナ海、インド〜西太平洋。

生態

やや深い海で動物プランクトンやカタクチイワシなどイワシ類の稚魚を補食している。
見た目は平凡であるが、実は? と言える隠れた能力がある。ホタルのように光を発するのである。腹側の胸部から肛門の後ろにかけて発光バクテリアを共生させている。
この光を腹から尾に近いところまでのびる透明な部分をレンズとして「ほたる」のように光る。
体長は14〜6センチまでになる薄紅の美しい魚である。

基本情報

すり身原料なので一般には知られていない。
専門の漁があるのは愛媛県西部のみかも知れない。

水産基本情報

市場での評価 鮮魚としてはまったく流通しない。
漁法 ぶり網
産地 愛媛県、鹿児島県


愛媛県宇和島市のホタルジャコ 四国愛媛県宇和島市などでは「ぶり網」でもって漁獲対象となっている。この「ぶり」というのは網につく「ぶり木」という浮木のことであって、当たり前だが魚のブリではない。他には底引き網でも水揚げされている。

選び方・食べ方・その他

選び方

赤味を帯びているもの。身がしっかりしているもの。

味わい

旬は春から初夏。卵巣・精巣が膨らんでも味が落ちない。
鱗は薄く大きく取りやすい。皮は薄いが破れにくい。骨はやや硬い。
透明感のある白身で鮮度落ちが早い。熱を通すと適度に締まる。
ホタルジャコの身色 白濁してほんのり赤みがさす。この白濁させているものが脂である。下部、尾鰭から腹鰭にかけて白い帯がある。この部分に脂があり非常にうま味が強い。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ホタルジャコの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身)、煮る(煮つけ)、焼く(塩焼き、干もの)、揚げる(唐揚げ)


ホタルジャコの刺身 鮮度がよいものは刺身にしたい。残念なのは産地などでしか鮮度がいいものが手に入らないこと。皮は薄く、引っ張ると剥がれる。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮を剥き、そのままか適当に切る。脂は全体に混在して白濁する。この脂が口の中で溶けながら甘みとして感じられる。魚としてのうま味も豊かで非常にうまい。

ホタルジャコの煮つけ 初夏の子持ちを煮つけにしたもの。身に甘みがあり、煮ると適度にしまる。とてもうまい!
ホタルジャコの塩焼き 小さいが身に厚みがある。振り塩をして少し寝かせる。これをじっくり焼き上げる。焼き上げたときの香りが高く、身がふっくらと柔らかい。身離れもよく、脂が豊かなので豊潤で非常にうまい。
ホタルジャコの一夜干し 単に塩焼きにしてもうまいが、軽く干して焼くとより美味に。かぶりつくと思った以上にたっぷりと身がついているので驚く。
ホタルジャコの唐揚げ
開いてじゅっくり時間をかけて唐揚げにしたもの。さくさくとして香ばしく、身に甘みがある。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

主に練り製品の原料となる。非常に上質なものだが、小形なので利用する地域が限られる。
宇和島市のハランボで作る「じゃこ天」 「じゃこ天」は愛媛県西部で作られているが、特に宇和島市のものは「はらんぼ(ホタルジャコ)」で作るものをよしとしている。小魚のうま味そのままに、軽く炙って食べると独特の風味も感じられて美味だ。[薬師神かまぼこ 愛媛県宇和島市丸之内]

釣り情報

歴史・ことわざなど

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■ホタルジャコといえば即、愛媛の名産品じゃこ天を連想するほど、水産の世界で知名度は高い。だがホタルジャコ自体を直接食用として使うことはまずなさそうである。また鮮魚として本種を手に入れるのも産地ではいざ知らず、非常に難しい。じゃこ天の味や、その詳しい解説などは後述するとして、まずは鮮魚としてのホタルジャコである。
註/今回のホタルジャコは全体に小型のものが多かった。
 まずは生で食べてみる。身が柔らかいと思い、今回は寿司職人(『市場寿司 たか』)にさばいてもらう。まず刺身の味であるが、実はまったく期待せずに食べたためだろうか? 意外なほど美味に思えたのである。客観性を失うと危険なので協力していただいた、寿司職人の隆さんにも批評してもらうが、これも上々とのこと。柔らかく食感はよしとは思えないが旨味があって、甘味がほんのりと舌に浮かんでくる。これが心地よいのだ。これを握りにしたものもうまい。想像ではあるが大型、10センチを超えるものは片身1かん(片身で寿司1個に握る)にでき、寿司種としていいかも知れない。
 小魚の定番の唐揚げはもちろんいい味。また塩をしないで軽く干して焼いたものを作る。これを焼いて、しょうがしょうゆで食べてみる。これも香ばしくいいのであるが、素直に干物を作ったら「こちらの方が絶対にうまい、と思った。

地方名・市場名

ムツ
参考文献 場所和歌山県 
アカクチ
参考文献 場所和歌山県和歌浦 
ゴソ
参考文献 場所静岡県静浦 
ホタルジャコ
参考『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 場所高知県 
チイキジャコ
参考文献 場所高知県須崎市 
キガネ
参考文献 場所高知県高知市御畳瀬・浦戸 
ハランボ

イシブチ
参考文献