ホソトビウオ

ホソトビウオの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
体長28cm前後になる。 頭部に丸みがあり、側面から見るとやや低い猫の目形。 胸鰭は全体に暗色。胸鰭の前方から2本(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみ)までが不分枝で、長さは背鰭基底後端を超えない。それ以外は枝分かれしている。
体長28cm前後になる。 頭部に丸みがあり、側面から見るとやや低い猫の目形。 胸鰭は全体に暗色。胸鰭の前方から2本(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみ)までが不分枝で、長さは背鰭基底後端を超えない。それ以外は枝分かれしている。

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珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★★★
非常に重要
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
動物界脊椎動物門硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区棘鰭上目スメグマモルフ系トウゴロウイワシ亜系ダツ目トビウオ亜目トビウオ科Cypselurus属
外国名
英名/Darkedged-wing flyingfish
学名
Cypselurus hiraii Abe, 1953
漢字・学名由来

漢字 細飛魚 Hosotobiuo
由来・語源 記載者の阿部宗明の命名だと思われる。体形から。
種小名/hiraii 東海区水産研究所真鶴試験地に1953年当時勤務していた平井政次(ひらい まさじ)にちなむ。『日本産魚類全種の学名 語源と解説』(中坊徹次・平嶋義宏 東海大学出版部 2015)

Abe
阿部宗明(あべ ときはる Abe Tokiharu 1911-1996)。魚類学者。田中茂穂の後継者。多くの魚を記載。国内だけではなく、「新顔の魚」にて輸入、海外で漁獲される魚の魚名も多数つけている。
地方名・市場名
アカラコ
参考京都府 場所京都府丹後地方 
マルトビ[丸飛] マル[丸]
備考市場ではマルトビ(丸飛)、マル(丸)と呼ばれることが多い。 場所市場 
マルアゴ[丸あご]
場所兵庫県但馬地方、島根県 
アゴ コメ[小目]
場所島根県 
トビウオ ニュウバイトビ[入梅飛] マル[丸] マルトビ[丸飛]
参考文献より。 

概要

生息域

海水魚。
北海道〜九州西岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道太平洋沿岸、仙台湾〜屋久島の太平洋沿岸。
朝鮮半島。

生態

産卵期は晩春から夏。
北上しながら産卵する。
非常に大きな群れを作る。

基本情報

琉球列島をのぞく日本列島を南北に回遊している。九州以北で食用とする主なトビウオは大型のハマトビウオと、中型のトビウオ、ツクシトビウオ、小型種のホソトビウオの4種類だ。
中でも本種は春から夏にかけて日本海などに産卵回遊してきて大量に水揚げされ、もっとも重要な種といえそう。
長崎県〜山形県などにかけて作られる焼き干し、煮干しは人気が高く高級品である。
また練り製品の原材料としても重要で島根県の「野焼き蒲鉾」など名品も多い。
鮮魚として出回る量も多く、夏の卵巣なども好んで食べられている。
珍魚度 普通の食用魚だが、晩春から初夏に多く、他の地域に出回らないこと。加工用にも使われるために流通量が多いとはいえないので、入手には少しだけ努力が必要。

水産基本情報

市場での評価 夏などにまとまって入荷してくる。鮮魚としては安い。
漁法 刺し網、定置網、巻き網
産地 長崎県、島根県など

選び方・食べ方・その他

選び方

見た目の銀色が輝いているもの。鰓が鮮紅色であること。触って硬いもの。

味わい

旬は晩春〜夏。
鱗は薄く細かく取りやすい。皮は厚みがあるが弱い。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で血合いが大きい。熱を通すと硬くしまる。

料理の方向性
生でも焼いても、煮て揚げても味のいい魚である。特に鮮度のいいものは生食して美味。たたき、なます、なめろう、刺身、酢じめなどいろいろ試していただきたい。単に焼いてもうまいがやや硬く締まる。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

ホソトビウオの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、ぬた、たたき、なめろう)、揚げる(フライ、唐揚げ)、焼く(干物、塩焼き)、煮る(煮つけ)、汁(みそ汁)
ホソトビウオのたたきなます(なます) 単に刺身では淡泊にすぎるというか、血合いなどがきれいではない。刺身は産地周辺でと思った方がいい。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。これを比較的薄く切り落としていき、食べる。香辛野菜と合わせてもいいし、酢みそを添えてもいい。


ホソトビウオのみそたたき(なめろう) 胸鰭を切り取り、腹鰭を抜き取る。水洗いして三枚に下ろして、細かく切る。香辛野菜であるねぎ、大葉(青じそ)、みょうが、みそを加えて包丁で細かく叩く。包丁が切れないと団子になる。皮をつけたままでも、引いて使ってもいい。
ホソトビウオのタルタル風 ホソトビウオの身を細かく切り、玉ねぎ、ピーマン、オリーブの塩漬けなどをオリーブオイルで和えて塩コショウ、オリーブオイルで味つけする。これをトマトのコンカッセの上にのせただけだが、実にいい味になる。
ホソトビウオのフライ 水洗いして三枚に下ろして腹骨、血合い骨を取る。塩コショウして小麦粉をまぶし、卵・小麦粉・少量の油・水をあわせてた衣をくぐらせて、パン粉をまぶしてやや強火で揚げる。さくっと揚がって、身に独特の風味があり非常にうまい。
ホソトビウオの唐揚げ 小振りのものを選んで作るといい。水洗いして腹開きにして、水分をよく拭き取る。片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げにする。丸ごとかぶりつけて、さくさくと食べられる。実にビールに合う。
ホソトビウオのみそ汁 ここでは1本丸ごと使ったが、たくさん下ろしたときにはあらを集めて使ってもいい。水洗いして器に入る大きさに切り、湯通しする。冷水に落としてぬめりや残った鱗を流し、水分をよくきる。これを水から煮出してみそを溶く。昆布だしを使ってもいいが、水でも十二分にうまい。とてもご飯に合う。
ホソトビウオの塩焼き 水洗いして振り塩をする。1時間以上置き、じっくりと焼き上げる。胸鰭は取った方が焼きやすいが、貧相でもある。じっくりと焼き上げると少し硬く締まりすぎるが捨てがたい味。

好んで食べる地域・名物料理

九州から日本海各地。
とびうおのちんちん煮 ホソトビウオ、ツクシトビウオの卵巣を煮つけにしたもの[『四季の料理 飛島に伝わる郷土料理Ⅱ』(酒田市農林水産課)]
トビウオすり身のみそ汁 日本海周辺で夏になるとスーパーに並ぶのが「トビウオのすり身」である。初夏からとれ始めるホソトビウオと少量ながらツクシトビウオも混ざっている。これを湯の中にスプーンなどで落としていく。浮き上がってきたらみそを溶く、それだけでとてもうまいみそ汁になる。

加工品・名産品

飛び子 すしネタなどになる「飛び子」はもともとは本種の卵巣。
焼きあご とれたばかりのホソトビウオを焼いて、干し上げたもの。琥珀色の濃厚で香ばしさを感じるようなだしがとれる。これでみそ汁や煮ものに使ってもいいが、ラーメンのつゆにすると絶品である。[満村水産 長崎県平戸市]
飛び魚の焼き干し 山形県飛島で作られているもの。とれたばかりのホソトビウオを開いて炭火で焼き干したもの。庄内地方の中華そばのスープにも使われているが。その人気の一端を担っている。
あごだし 長崎県産の焼き干しと昆布を水につけ、1時間以上置く。火にかけてじっくりと長時間かけてあたためる。飴色の濃厚なだしがとれる。
あご煮干し 島根県石見地方、隠岐などで作られているもの。初夏に大量にとれる「あご(ホソトビウオ)」をゆでて干し上げたもの。上品でいながらうま味の強いだしがとれる。
あごだし 初夏に大量に揚がるホソトビウオをゆでて干したものを、だしの取りやすい大きさにくだいたもの。[隠岐の島づくり株式会社 島根県隠岐郡隠岐の島町]
煮干し 内臓と頭を取り去ったものをゆでて干し上げたもの。非常に上質でうま味の強いだしが出る。品質も上々だ。[フードはまおか鮮魚 石川県珠洲市]
塩あご 長崎県平戸で揚がったホソトビウオに塩味をつけ、一夜干しにしたもの。とても酒がすすむ。
とびうお出雲干し 初夏、島根半島に寄せてきたホソトビウオを開いて干し上げたもの。脂があっておいしい。[渡邊水産 島根県出雲市]
ぬか漬け 石川県輪島市など。塩漬けにして、糠に漬け込んだもの。そのまま切って食べる。[石川県輪島市]
あご野焼き 島根県名物の「あご野焼き」。新鮮なホソトビウオのすり身を使い、炭火で1本1本焼き上げる。松江市内『青山蒲鉾店』
あごはんぺん 背の青い魚ではあるが、上品であっさりした味に仕上がっている。[出雲国大社食品 島根県出雲市]
あごの天ぷら トビウオ類のすり身を揚げたもの。甘味控えめであっさりしたなかにうま味が感じられる。[出雲国大社食品 島根県出雲市]
純・あごかまぼこ トビウオのすり身を主な原料とした蒲鉾。なめらかな食感で甘味控えめでうまい。[長岡屋 島根県松江市]
トビウオのすり身 初夏になると日本海側の町のスーパーなどに並び始める。これを昆布だしに落としてお吸い物やみそ汁に、味付けして揚げると「天ぷら(薩摩揚げ)」になる。

釣り情報

歴史・ことわざなど

盆だて 「八月六日ころまでに、嫁が実家に、そうめんを重箱いっぱいと、とびうおの塩干ものを重箱のふたを逆さにした上にのせて持って行く。実家では半分を受け取り、残りを返す」。(大阪府大阪市旧南河内山村 トビウオ種不明)
お盆には塩干しとびうおの焼いたものと、じゃがいも、焼き麩、湯葉、かんぴょうの煮ものを食べる。(大阪府大阪市旧南河内山村 トビウオ種不明)
焼く魚 〈比目魚、鰈、鮎並、鰺、鱈、鯡、鮫、生節等は皆煮つけで、焼くのは蒸し鰈、魴鮄、鰯、飛び魚くらいであたが、煮肴は私は嫌いであった〉『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)
塩乾 〈私ら市場関係者は、取引を簡明にするため、魚体の大小を区別している。成熟魚(大型 かくとび)を角飛、次を中飛(ちゅうとび)、小型は蠅飛(はいとび)〉。蠅飛がホソトビウオだ。『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社)
長野県安曇野 昭和五年の母の家計簿に「六月三日は、葡萄酒一本(一円十五銭)、飛び魚十本(五十銭)、パインアップル一缶(四十五銭)。長野県南安曇郡豊科町(現安曇野市)。『私の信州物語』(熊井啓 岩波現代文庫)