オオヒメ

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体長80cm以上になる。鱗はヒメダイと比べると大きく、体側は赤みがかったベージュ。尾鰭の後縁は赤く、目はしずんだ黄色。頭部背側に暗色の細かい斑紋がある。[20cm SL・182g]
体長80cm以上になる。鱗はヒメダイと比べると大きく、体側は赤みがかったベージュ。尾鰭の後縁は赤く、目はしずんだ黄色。頭部背側に暗色の細かい斑紋がある。
鱗はヒメダイなどと比べて大きい。
尾鰭の後縁は赤。
頭部背の斑紋は細かく、虫食い状の文様はない。またヒメダイにある帯状の無鱗域もない。
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目フエダイ科ヒメダイ属
外国名
Snapper,Sea-perch
学名
Pristipomoides filamentosus (Valenciennes, 1830)
漢字・学名由来

漢字 大姫 Oohime
由来・語源 ヒメダイに似て大型になるという意味合い。別名、クロマツ。
ヒメダイの語源などは不明。Pristipomoides filamentosus (Valenciennes, 1830)は『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)ではヒメダイの学名とされていた。
田中茂穂が Pristipomoides oculatus としてカネコフエダイをチビキモドキと改名するとしている図版は本種である可能性が強い。『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
標準和名は書籍では『魚類大図鑑 南日本の沿岸魚』(益田一、荒賀忠一、吉野哲夫 東海大学出版会 1975)で初出。

Valenciennes
アシル・バランシエンヌ(Achille Valencienne 1794-1865)はフランスの動物学者。ジョルジュ・キュビエとともに『魚類の自然誌』を刊行。国内で水揚げされる多くの魚を記載。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。100mよりも深場。
伊豆諸島、小笠原諸島、和歌山県周参見、高知県柏島、種子島、琉球列島、南大東。神奈川県三崎では幼魚。
台湾、東沙諸島、西沙諸島、南沙諸島、インド-太平洋。

生態

小魚やイカ、ヒカリボヤなどを餌としている。
産卵期は沖縄では4月〜8月。

基本情報

10kg近くなる大形魚で、沖縄、鹿児島、伊豆諸島、小笠原などが産地。ヒメダイに似ているので、混同されがちだが、近年増えているように思えてならない。関東、九州、沖縄では重要な食用魚である。
高級魚で、主に料理店で利用され、小売りされることはほとんどなかった。関東、沖縄、九州では古くからプロ(水産業者)の間では馴染みの深い白身魚。
刺身や塩焼き、煮つけ、吸い物の種など用途が広い。

水産基本情報

市場での評価 入荷量はあまり多くはない。関東では白身の高級魚で一定の評価があり、値はやや高値安定。
漁法 釣り。
産地 沖縄県、東京都、鹿児島県

選び方・食べ方・その他

選び方

触って張りのあるもの。鰓が鮮紅色であるもの。古くなると白っぽく退色する。

味わい

旬は春〜夏。
比較的年間を通して味がいい。
鱗は大きく硬い。皮はほどよい硬さで霜皮造りにもできる。骨はあまり硬くない。
白身でほどよく繊維質で身離れがいい。まったくクセがない。熱を通しても硬くならない。

料理の方向性
やや高値だが歩留まりがよく、大形魚は無駄なく切り身が取れる。白身で適度に繊維質で熱を通しても硬く締まらない。刺身はもちろんだが、煮る、焼く、ソテーするなどなんにでも使える。すべて美味。フレンチでの需要も高そう。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

オオヒメの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身、カルパッチョ、焼霜造り)、汁(みそ汁、潮汁)、煮る(煮つけ)、ソテー(バター焼き、ポワレ)、焼く(塩焼き)
オオヒメの刺身 本種は大小に関わらず刺身にしておいしい。水洗いして三枚に下ろして皮を引く。これを刺身状に切る。鮮度がいいと血合いが薄紅で銀皮が美しい。きめ細やかな身質で呈味成分から来る甘味が感じられる。脂ののった時季など、魚類中トップクラスの味わいである。
オオヒメの焼霜造り やや上品で淡泊な味わい。ここでは小型を三枚に下ろす。皮目をあぶって冷水に落として粗熱をとる。皮は熱に弱いので少し冷蔵庫などで落ち着かせてから切りつける。上品な味わいの身に皮目の香ばしさ、うま味がプラスされて非常においしい。
オオヒメのカルパッチョ 水洗いし、三枚に下ろして皮を引く。出来るだけ薄切りにしておく。皿ににんにくとこすりつけ、オリーブオイルとルッコラをしいて、オオヒメの切り身を均等に並べていく。並べ終わったら上からスプーンなどでとんとんとたたく。上からディルを散らし、ミニトマトの薄切りを並べる。仕上げに振り塩をして再度オリーブオイルをかける。
オオヒメのポワレ あっさりした白身で熱を通しても硬く締まらないので、油を使ってソテーしてもうまい。ここでは切り身に塩コショウし、オリーブオイルでじっくりと皮目が香ばしくなる程度にソテー。切り身を取りだし、クールブイヨンと白ワインでデグラッセしてソースにした。
オオヒメのムニエル 切り身に塩コショウして少し寝かせる。表面の水分をていねいに拭き取り、小麦粉をまぶして多めの油でじっくりとソテー。仕上げにバター(マーガリンでも)で風味づけしたもの。ソテーしても硬く締まらずふっくらと仕上がる。
オオヒメの塩焼き 水洗いして二枚に下ろし、骨つきの方を切り身に塩をして1時間ほど寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。皮目から実にいい香りが立ち上がる。身はしっとりとしてふくらみ、甘味が強い。
オオヒメのの兜煮(煮つけ) ここでは兜をつかったが、あらでも切り身でもいい。兜は梨子割りにして湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、水・酒・醤油で煮る。砂糖、みりんを加えてもいい。皮は柔らかく身離れがいい。身にうま味成分から来る甘味が感じられる。
オオヒメの長崎風天ぷら 長崎県や沖縄県で盛んに作られる天ぷらは衣に様々な味付けをしているのが特徴。切り身に軽く振り塩をする。少し寝かせて表面に出て来た水分を拭き取る。小麦粉をまぶして衣(小麦粉・塩・砂糖・ビール)をからめて揚げる。ふんわりして柔らかく豊潤な味わいになる。
オオヒメのみそ汁 あらなどを集めて置く。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、水から煮出してみそを溶く。野菜などはお好みのものを一緒に煮るといい。あらなどからうま味豊かなだしがでて汁がまことに美味。せせり食う実もうまし。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品

やや高価であり、切り身にもなる大形魚なので加工品になることはまずない。

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

オオノマ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都八丈島 
バケヒメ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都神津島 
アカマス
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都神津島・三宅島 
ヒメ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都神津島・八丈島 
アカマツ
参考『魚名からみる自然認識:沖縄・伊良部島の素潜り漁師の事例から』(高橋そよ 2014年03) 場所沖縄県伊良部島 
オーマツ マルマツ
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島 
オオマス
備考ヒメダイを「コマス(小ます)」、本種を「オオマス(大ます)」と区別して呼び分ける。 場所東京都八丈島 
オゴ オゴダイ
場所東京都市場などで 
グルクンマチ
場所沖縄県宮古 
マーマチ
備考一般的。 参考『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012)、『沖縄水産試験場 沖縄で漁獲される主要魚の名称一覧表』) 場所沖縄県南城市知念漁協・沖縄本島 
クロマツ
備考別名。