顎口上綱硬骨魚綱新鰭区真骨亜区ニシン・骨鰾下区ニシン上目ニシン目カタクチイワシ科カタクチイワシ属
★★ これは常識
学名 | Engraulis japonicus (Houttuyn) |
外国名 | 英語/Japanese anchovy, Half mouth sardine |
同科同属 | その他のニシン目の魚へはここから! |
漢字・由来 | 漢字/「片口鰯」。 由来/「カタクチイワシ」は関東、和歌山、北陸などでいう言葉。上顎が長いが動かない。口を開けると下あごだけが垂れ下がり目立つため。 |
地方名・市場名 |
別名「セグロイワシ」、「ヒシコイワシ」。 |
形態 | 体長10センチ前後になる。紡錘形で細長い。背が黒く腹が銀白色。吻が前に出て、上顎が長い、上顎は動かず、下あごのみ動く。下あごは薄く、大きく垂れ下がる。 |
生息域 | 海水魚。日本全域の沿岸。朝鮮半島、中国、台湾、フィリピン。 マイワシよりも南方系であり、より沿岸性が強い。 |
生態 | 産卵は春と秋。暖かい地域では年間をとおして産卵する。北に棲息するものは春から秋にかけて。 沿岸性が強い。 抱卵数は2000~60000万粒。 寿命は2年ほど。 動植物プランクトンを食べる。 |
一般的評価 | 意外にスーパーなどでは見かけない。 むしろ加工品として出回っている。 煮干し、みりん干し、しらす、ちりめんと、日常親しみ深い加工品の材料。 何気なく食べてしまっている、そんな魚である。 鮮魚としても瀬戸内海などでは盛んに食べられる。 |
水産基本情報 | 水産物としての重要度/★★★★★非常に重要な水産物 市場での評価/鮮魚はとても安い。年間をとおして入荷があるが量は少ない。 多くは干物、煮干しなど加工品になる。 稚魚は「しらすぼし」、「ちりめん」、「釜揚げ」など加工品として出回ることが多い。生食用として鮮魚としても出回っている。稚魚の値段は高値。 漁法/巻き網、船曳網、棒受け網漁、定置網、すくい網漁 産地(漁獲量の多い順)/千葉県、茨城県、長崎県、三重県 年間30万トンから50万トン。 しらす産地(漁獲量の多い順)/静岡県、兵庫県、愛知県、愛媛県、大阪府 年間6万トンあまり 食用だけではなくカツオ漁のエサとしても重要。 |
雑学 | ■俗言に「小いわしを七度洗えば鯛の味」というのがある。 ■煮干し中もっとも高価なもの。 ■イワシ3種/マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシをイワシという。またイワシ3種(イワシ三種)という言い方がなされる。 |
選び方 | 身が硬くしっかりしたもの。古くなると目が赤くなり、腹が割れてくる。 |
味わい・栄養 | 味の評価/★★★★=非常に美味 旬は味のためではなくたぶん鮮度保持などの問題から冬。 小魚で旨みが強い。 輸送に弱く、鮮度が落ちやすい。 |
調理法 | 刺身、酢のもの(酢漬け、胡麻漬け、なます)、天ぷら(唐揚げ)、塩焼き(干物)、煮つけ、塩漬け、オイルサーディン他 |
食べ方 | 鮮度さえよければ刺身が最高だ。下ろすのは手を使ってやるのだが、思った以上に簡単。下ろしたものを氷の入った塩水で洗うと身がしまり、より味がよくなる。 ショウガ醤油でもいいし、からし酢みそで食べてもうまい。 「小鰯(こいわし)も七度洗えば鯛の味」なんていうが、別にマダイと比べる必要はない。カタクチイワシの刺身はhんとうにうまい これを酢の物にしてもいい。また大根などとなますにもなる。 九十九里(千葉県)などで作られるのが「胡麻漬け(ごまづけ)」。 塩をして、胡麻と甘酢に漬け込む。これなど家庭でも簡単にできて美味。 胡麻漬け。三枚に下ろして(小さいものは頭とはらわたを除いただけでいい)振り塩。少し置いて甘酢に、胡麻とともに漬け込む。簡単だしうまいしという千葉県九十九里地方の郷土料理 干物(丸干し)というのもうまい。 当然塩焼きにしても美味。 石川県金沢周辺には「塩いり」という郷土料理がある。 カタクチイワシなどを塩ゆで、水分をから煎りして飛ばし、酢と大根おろし、醤油で食べる。 塩炒り。塩辛い熱湯でゆでて、水分を一度捨て、から煎りしてなお水分を飛ばす。これを酢と大根おろし、しょうゆなどで食べる。石川県金沢周辺の郷土料理 梅干しと煮る、ショウガ風味で煮ても美味。 頭とはらわたをとり、天ぷら、唐揚げも美味。 塩漬けにしてオリーブオイルに漬け込むと自家製アンチョビーとなる。 また立て塩に漬け、オイルの中でゆっくり火をとおしたものが、オイルサーヂィン。これも美味。保存性も高いので自家製をお進めする。 稚魚であるしらすは神奈川県、静岡県、高知県などで盛んに生食する。 ちょっと苦みがあるものの、鮮度さえよければ生臭さもなく、旨味甘みがあってうまい。 また釜揚げしらす、しらす、ちりめんなど食卓にあって楽しい加工品が多い。 |
好んで食べる地域 | ■コイワシ(小イワシ)の刺身/広島県ではカタクチイワシを小イワシといって刺身などにする。これが非常に美味。また広島県自体がカタクチイワシをよく食べる。 ■生しらす/神奈川県相模湾沿岸、静岡県、高知県。 ■いわしの塩炒り/石川県金沢周辺の郷土料理。塩水でゆでて、余分な水分を飛ばし、酢と大根おろし、しょうゆで食べる。 |
加工品・名産品 | ■煮干し/香川県などで盛んに作られる。ゆでてから乾燥させたもの。年々価格が上がっている。現在では高級品。 ■丸干し/九十九里の目刺し(目に竹串などを通したもの)が有名。 ■ごまめ(五万米)・たづくり(田作り)/カタクチイワシの小さなもの(かえり)を素干しにしたもの。炒って甘辛い地に搦めて正月料理に使う。 しらす/稚魚をゆでて上げただけのものを「釜揚げ」、■軽く干したものを「しらす干し」。東日本で多い。 ちりめん/強く干したものを「ちりめん」。西日本に多い。 ■たたみいわし(畳鰯)/稚魚を水洗いして、すに広げて紙状にして、干したもの。静岡県、神奈川県、茨城県などで作られる。 ■ごま漬け/九十九里などで作られる「ごま漬け」。家庭でも簡単にできる。小型のものを選んで頭と尾を取り、塩をからめ水を抜き水洗い、これを甘酢とごまで漬ける。 ■「みりん干し」、「さくら干し」、「末広干し」/千葉県などで作られている。砂糖しょうゆ、みりん・しょうゆの甘辛いタレに漬けて干したもの。 |
釣り | 堤防(波止)から浮木を使ってアミエサで釣る。浮きづり、サビキ釣り。 |
参考文献 | 広辞苑、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出)、『魚と貝の事典』(月賢二 柏書房」)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『日本近海産 魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会) |