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形態◆体は細長い。頭部が平たく、目に脂瞼(脂肪の膜)がある。
ボラ目(Mugriliformes) ボラ科(Mugilidae) について◆
1科約17属約66種。
海底の泥についている微細な藻や有機物を食べている。泥を漉して食べているので胃の筋肉が発達している。
汽水域、内湾に多く、幼魚期には淡水にまで入る。
硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区刺鰭上目スメグマモルフ系ボラ亜系ボラ目ボラ科ボラ属
ボラ(漢字/鯔 英名/Flathead gray mullet)
学名/
Mugil cephalus cephalus Linnaeus この亜目の他の魚へはここから
魚貝の物知り度/★★★ 知っていたら通人級
食べ方◆刺身/鍋もの/塩焼き/フライ/ムニエル ◎非常に美味(注/環境によって臭いものがある)
大きさ◆60センチ前後になる
生息域◆北海道以南。熱帯西アフリカ〜モロッコ沿岸をのぞく全世界の温帯・熱帯域。
生態◆
産卵期は10月〜1月。秋になると黒潮の影響のある暖かい場所に回遊、産卵する
低層に沈積した微生物や藻、原生動物、有機性のデトリタスなどを食べている。なかでももっとも重要な餌は植物性のもの。
市場での評価・取り扱われ方◆関東には千葉県銚子などから入荷する。値段は非常に安い。
ボラの基本◆
■出世魚。
歳時記、俳句季語では「秋」。
「いなせ」は勇み肌で、粋な若者のこと。またその様子。威勢よくさっぱりした気っ風の若者のこと。魚河岸の若者が、ボラの若魚であるイナの背のように髪を結んだことからくる。
アフリカ、イスラエル、東南アジアでは重要な養殖魚。
文献にみるボラ◆
鯔開き/滝沢馬琴の日記から暮らしに関するものを考察した『馬琴一家の江戸暮らし』高牧實(中公新書)に【鯔開き】というのがある。
漁獲方法◆刺し網
漢字◆「鯔」。
由来◆「『角笛』に似ているところから、中国の胡語〈はら〉が転じて、わが国語〈ぼら〉になった」。
「ほばら(太腹)が転じて」、「掘るの意味で、ボラは頭を泥に突っ込んで餌を食べるから」
呼び名・方言◆
成長により名前が変わる出世魚。地方によって多少違っているが2〜3センチのものを「ハク」、10センチくらいまでを「スバシリ」、5〜18センチを「オボコ」、10センチ〜25センチを「イナ」、30センチ〜40センチを「ボラ」、40センチもしくは50センチ以上を「トド」。「トド」を「カラスミボラ(唐墨ボラ)」ということもある。
「エブナ」、「シロメ(白目)」
古名に「クチメ」、「ツクラ」、「シクラ」。
■「ナヨシ」、「ミョウキチ」。
ボラ、メナダの呼び名・方言のページへ
釣り◆関東東海などでは冬に空針で狙う。赤く目立つ浮きをつけて、好奇心で近づいてきたボラを引っかける。
◆食べてみる◆
 ボラの評価は瀬戸内海、熊野灘などを控える関西で高く、関東で低い。これは戦前戦後に隅田川など関東の河川がひどく汚染されて、臭いボラがとれていたためだろう。それ以前、江戸時代、明治、大正、昭和の初期と江戸湾(東京湾)においてボラの養殖が盛んであった。当然、関東でもボラは高級な食用魚、また祝儀に使われる魚であったことがうかがえる。
 相模湾などでは秋から初冬にかけてボラの刺し網漁が行われる。これは卵巣をとるのが目的だが、刺身や塩焼き、吸い物や、鍋物にして美味である。ボラは不思議なことに卵巣が成熟して身が痩せても脂はある。
 また関東よりも瀬戸内や西日本で、ボラを珍重する。とくに冬のボラは美味であり、それをよく知っているのだ。

 刺身は血合いの色が美しく甘味旨味が合って上物のひとつ。写真を見てもわかるように皿に映える。これを洗いにしてもうまい。


八王子綜合卸売協同組合にある韓国食材キムチの店『コリアンフーズ』で刺身にしてもらう。韓国では独特の酢みそで食べる。クセのない魚で上品なのだけど、やや淡白な味わい。韓国風に食べると淡白過ぎるのがおぎなえる。

 冬には鍋の材料となる。
「そろばん」と言われる胃の幽門はコリコリとした歯触りで、塩焼きにして食べる。


砂泥ごと餌を飲み込むボラの幽門。これが「へそ」「そろばん」と呼ばれる。塩焼きにするとシコシコっとした食感でうまい

◆名物料理◆
いなまんじゅう/愛知県の郷土料理。ボラの若魚を姿のままワタをずぼ抜きし、そこに銀杏やニンジンなどを味噌と一緒に詰めて焼き上げるもの。
唐墨/長崎県名物となっている。ボラの卵巣を塩漬けして、天日で干し上げたもの。


八王子市『天野鮮魚店』製の唐墨
相模湾平塚ボラ刺し網の寿司に関しては寿司図鑑へ!
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●同定/『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会) ●参考/『魚の分類の図鑑』上野輝彌・坂本一男 東海大学出版局)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版)、『日本語源大辞典』(小学館)、 『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、『歳時記語源辞典』(橋本文三郎 文芸社)
■市場魚貝類図鑑データベースから。
がついたものは引用部、もしくは参考文献あり
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